イーサリアム(ETH)とビットコイン(BTC)、DeFi開発における特徴を比較|Longhashコラム後編
ビットコイン上、イーサリアム上における「DeFi(分散型金融)」は機能面、安全性の違いなどそれぞれ特徴があります。
今回の記事では、イーサリアムベースの「DeFi(分散型金融)」アプリ開発の複雑性とビットコイン上での開発の可能性について解説をしていきます。
- 前回の記事紹介
- 前回の記事では、今後成長を遂げる分野として期待が集まっている”DeFi(分散型金融)”。その分散型金融のプラットフォームとしてのビットコインに着目して、解説をしています。イーサリアム(ETH)とビットコイン(BTC)、DeFi開発における特徴を比較|LongHashコラム前編
イーサリアムベースのDeFiアプリは、時に不必要に複雑
ビットコインに比べ、イーサリアムの「Maker DAO」は、遥かに複雑です。
始めに、Maker DAOでは一つの第三者(オラクル)ではなく、地理的に多様で多数の第三者(オラクル)のグループが使用されます。(ただし、ビットコインが現存する方法で、「Abra」に複数のオラクルを追加することも可能)
次に、ユーザーが自分のETHをMaker DAOアプリに入れると、DAIトークンが生成されます。これにより、他のDeFiアプリ、特にイーサリアムネットワーク上に構築されたアプリと、はるかに簡単に統合することが可能になります。
例えば、Maker DAOユーザーは、DAIトークンをCompoundに貸し出すことで、DAIの収益を上げることができます。
また、事実上Maker DAOのシステムを運営するトークン、MKRトークンも存在します。
もちろんこれらはほんの一例で、AbraとMaker Daoの仕組みには、他にも多くの違いがあります。
ビットコインではなく、Ethereum上のDeFi開発をする他の利点には、covenantsのような機能が実装可能なより複雑なウォレットや、基本プロトコルに新しいオペコードを必要とせずに、より良いセキュリティ保証を提供できる
「Lightning Network」などがあります(ビットコインの場合は新たなコードが必要)。
さらにイーサリアムは、フルノードの運用に伴う難易度の上昇に加えて、将来フルノードを運用するために必要な帯域幅を超えるために、そのブロックチェーンのサイズについて批判を既に受けています。
また、イーサリアム上に構築されている多くのDeFiアプリには、ネイティブETHアセット以外に、プロトコルに組み込まれた別の追加のトークンが付属しています
そのためユーザーは、単純にネイティブトークンを使用するのではなく、複数のトークン間で切り替える必要が出てきます。
スマートコントラクトの難しさ
しかし、もちろん例外もあります。
例えば”Uniswap”は、Bancor ICOが構築していたものを追加のトークンを必要とせずに、開発に成功しました。
イーサリアムのもう1つの問題は、安全なスマートコントラクトを作成することが、依然として非常に難しいということです。
最も明白な例は、Solidityの発明者の本人であるGavin Wood氏によって設立されたParityです。
Parityは、バグだらけのマルチシグ・ウォレットをイーサリアムユーザーに提供していました。
そのため、資金を確保するためだったり、様々なICOプロジェクトために、このソフトウェアを使用していた他の組織には、1億5000万ドル以上の損失が生じてしまったのです。
開発者はイーサリアム上で、より表現力豊かなスマートコントラクトを自由に作成できますが、それには相応のセキュリティリスクも伴います。
「Bitcoin Core」の主任メンテナーであるGavin Andresen氏が、2014年にイーサリアムを立ち上げる前に主張したように、イーサリアムで実行できる面白いことの多くは、ビットコインのマルチシグ機能の上に構築することもできます。
これは主に、信頼できる第三者(オラクル)の問題に基づいており、スマートコントラクトを決定するかどうか、スマートコントラクトにて使用するためのデータをブロックチェーンに送信するかなどの決断をするためには結局、現実の世界に存在する人物が必要となるというによるものです。
スマートコントラクトは、巷で謳われているほどスマートなのか?
例えば、イーサリアムのMaker DAOが本当に分散型であるかどうかは不明確です。Maker DAOは、信頼できる価格のデータフィードに依存することで、システムが正しく機能しているからです。
もしビットコインのAbraがそのシステムに、もっと多くのオラクルを追加したら、AbraとMaker DAOの間の検閲抵抗性と非中央集権性のレベルに、大きな違いはなくなるでしょう。
ここで注意すべきは、前述のように論理上イーサリアムは、開発者がより表現力豊かなスクリプト言語を使用して、より低い信頼依存性とより大規模な分散化を実現できるようになることです。
しかし現時点では、これらの追加機能がDeFiアプリにどれほど役立つかは明らかではないです。そのため、ビットコインでも十分なレベルの分散化を提供できる可能性があります。
また、ビットコインがLightning Networkの改善やconvenantsなどを実装する機能を追加していることも重要なポイントです。さらに、これらの高度なスマートコントラクト機能の多くは、まだ確実に安全な形ではイーサリアムに装備されていません。
「Taproot」のプロポーザルは、プライバシー、スケーラビリティ、および柔軟性の分野で大幅な改善をもたらすため、ビットコインのスマートコントラクトにとって、次の大きな一歩となるでしょう。
そうは言っても、いつプロトコルに組み込まれるかは不明なままです。長年のビットコイン開発者Matt Corallo氏によるBitcoin2019カンファレンスでのコメントによると、「Taproot」のビットコインネットワーク上でのアクティベーションの実現までは、2年ほどかかるかも知れないようです。
また、ビットコイン上でのDeFi開発に関して、注目すべきもう1つの重要なプロポーザルは、「Drivechain」です。Drivechainは、異なるセキュリティのトレードオフを伴うオプトイン方式ではあるものの、現在イーサリアムで行われているのと同じ種類のオープンイノベーションへの扉を開くことができる可能性を秘めています。
DeFi開発の進行状況を見るのはビットコイン
RSKはビットコインのサイドチェーンで、イーサリアムが既に実行している機能の大部分と同じ役目を果たすこと目的としています。このイーサリアム風のサイドチェーンは、Drivechainの概念とLiquidのような連携モデルを組み合わせた仕組みを利用しています。
Drivechainの開発者であるPaul Sztorc氏も、「Bitcoin Hivemind」と呼ばれる分散型予測市場のサイドチェーンをできるだけ早く立ち上げたいと考えています。
「Sztorc」は、Augurを始めとするイーサリアム上予測市場プロジェクトの知的ゴッドファーザーであり、イーサリアムのDeFiエコシステムの一部と見なされています。
Drivechainの実験が成功した場合、ビットコイン版の面白いイーサリアムのDeFiアプリを別のサイドチェーンとして(またはRSKサイドチェーンの上に)構築することが比較的容易となります。ただし前述したように、今日存在するビットコイン上には、すでに数多くの興味深いDeFiアプリケーションを構築可能です。
さらに進んでいけば、Blockstreamが開発したSimplicity言語のようなものが、何らかの形でビットコインに取り込まれる可能性があり、それによってより洗練されたスマートコントラクトの開発が可能になります。しかしながら現時点では、これらの多くは理論上に留まります。
ビットコインコミュニティの保守的な考えのために、ビットコインに機能を追加することは非常に困難であることは歴史からも想像できるでしょう。ビットコインを「デジタルゴールド」として保護することは、他のどんな活動よりも優先されています。
そうは言っても、現存するビットコイン上にかなり強力なDeFiアプリケーションを構築することは既に可能です。
さらに今でこそイーサリアムは、開発者がDeFi開発をより自由に試すことを可能にしていますが、その優位性がいつまで続くのかは不明です。
そして、ビットコイン上でのDefi開発には、その影響ネットワーク、信頼度、長寿性、そして本物のお金として認識されているという点で、すでに大きなメリットがあるのは間違いありません。
つまり、DeFi開発の進行状況をきちんと把握するためには、ビットコインにも注目することが重要なのです。
引用元: CoinPost
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