国内取引所トップが見据える「アセットクラス」としての成長に必要なもの|DMM Bitcoinコラム⑵
仮想通貨が今後発展していくのに必要なものとは何でしょうか。その問いに対する答えとして、「アセットクラスとしての存在の確立」があります。
また、そのような形で成長を遂げていくとなると、どのようなアプローチが必要となるのでしょうか。
今回は、それらをテーマにお話しを進めていきます。
- 前回の記事紹介
- 前回の記事では、交換業者からみた業界のこれまでの流れ、そして2019年の注目すべき点や今後の展望についてお話しました。
交換業者からみた仮想通貨業界の盛衰、2019年注目のポイントは|DMM Bitcoinコラム①
仮想通貨を発展させていく上で必要なものとは
今後、仮想通貨の発展に何が必要になっていくのか、その点は各社によって捉え方は異なるでしょう。例えば、仮想通貨を汎用的な決済手段(弁済手段)として普及させていくことで、発展していくという見方をする業者もいます。
DMM Bitcoinの場合は、そのような発展の可能性もあると思うし、やっていきたい気持ちもありますが、近い将来でいうなら、それとは異なる見方をしています。
キャッシュ自体の価値を保全していく、遷移していく「アセットクラス」の1つとして暗号資産が存在していて、仮想通貨や暗号資産とよばれるアセットクラス全体がどう発展できるのかというところが我々の考えです。
仮想通貨を決済手段としてみるのか、アセットクラスとしてみるのかといった部分での違いといえます。
ただ、今回の法律の改正において暗号資産に呼称が変わることからも、決済手段としてよりも、アセットクラスとしてが全体的な認識ではないでしょうか。
アセットクラスとは多義語で、株や有価証券のアセットクラスを扱う株式市場や、不動産、現金というアセットクラスもあります。そのような様々なアセットクラスの1つとしての暗号資産というのがDMMの捉え方です。
「アセットクラス」としての成長に必要なもの
実体経済との結びつきをどう強くするかが、仮想通貨、暗号資産のアセットクラスとしての発展において必要となってきます。それを理解する上で参考になるのが株式市場の発展です。
なぜなら、暗号資産の性質は、有価証券の株に近いからです。株式市場の発展の説明は、暗号資産のアセットクラスとしての発展においても該当します。
それなので、ここでは株式市場の発展について説明しましょう。
株式市場の発展とは
株式市場は、新たな技術やサービスを提供する企業があって、それらがよりよい生活や経済に寄与していく、そしてそれが株式市場を通じて評価され、IPOを通じて新たに市場に組み込まれていくという形で形成されていきます。
一方で、社会的な役割が希薄になったり、意味がない産業領域となったものは、市場から退出していく、もしくは残ってもほとんど取引されない銘柄となります。
これは、社会や産業、経済の変化に応じて取引銘柄自体が新陳代謝している状態で、株式市場の発展のキモです。
新規上場がなく、新陳代謝がなく、お金が同じ企業に固定化されているなら、株式の数字自体が動かないことになる。株式市場自体に、新たな事業を始めるものが誰もIPOをしないとなったら、どんどん離反していく。そうなると、株式市場は発展しません。
継続的に新たなビジネスや産業で、将来的に成長する可能性が高い領域というのが、IPOを通じて、市場に組み込まれていく。その新陳代謝が働いてるかというのが株式市場のキモであり、株式市場の発展とは、新陳代謝が正常に機能することといえるでしょう。
経済が衰退すると株式市場も衰退しますが、経済の状況に応じて大きくなったり小さくなったりを繰り返す仕組みを、株式市場は長い間をかけて運営されてそのような状態を作りあげてきました。
このように経済の状況に応じて規模が変わる、つまり実体経済との紐づきが強いことから、GDPと上場株式の時価総額は、離反すると収束し、ほぼ一致するという考え方があります。
そのような機構を有しているのが株式市場です。
仮想通貨と実体経済の結びつき
株式市場が実体経済との紐づきが強い一方で、仮想通貨は生まれたばかりの状態で、そことの紐づきが非常に弱いのが現状です。ここをどう強くできるかが、本当の意味で、仮想通貨、暗号資産を発展させる必須条件でしょう。
また、株式市場では機能している新陳代謝が、仮想通貨ではまだ起きていません。具体的には、ユーティリティトークンのようなものであったり、何か財産的なものと紐づくものというのが、意味がなければディリスト(上場廃止)されていくという新陳代謝が機能していません。
海外の取引所では、トークンの上場と非上場を繰り返しているところもありますが、それらの銘柄と実体経済の紐づきがないため、新陳代謝の度に顧客の資産が減ってしまうというような状況になってしまいます。
そういった意味で、適正な新陳代謝をしながら社会経済との紐づきを強めていけるのかが、仮想通貨の発展のカギだとDMM Bitcoinはみています。
暗号資産ということでいくと、そのアセットクラスは株式市場に近く、上場株式の時価総額がGDPと一致する例のように、多様な銘柄で社会全体の相似形になることができるのであれば、株式市場並みに、仮想通貨自体も市場の時価総額が上がっていく可能性はあるでしょう。
実体経済と強く紐づいた場合の仮想通貨市場の規模
100%に近い形で、仮想通貨自体が株式と同じように実体経済との紐づきを強くした場合の、市場規模についての考察には様々なアプローチがあります。
仮想通貨の時価総額というのは、将来的に仮想通貨によって決済されたり、弁済されたりする実体経済の規模に対する期待値で表現されるという考え方をとる人たちもいて、個人的にはそれが正しいのではないかと思っています。そうなると、最大限の期待値としては次のようになるでしょう。
グローバルのGDP総額は8000兆から1京円くらいで、GDPに占める個人消費の割合はその半分から4割くらい。つまり、GDPベースでの個人消費の総額は4000兆円くらいとなります。
それを踏まえて、個人消費がすべて仮想通貨に置き換わるとなると、仮想通貨の時価総額は4000兆円と現在の時価総額(約30兆円)の100倍以上となります。これは、仮想通貨が広く一般に決済や弁済手段に使われるという世界であり、期待値としては最大限のものです。
それに対して、時価総額40兆円というのは、4000兆円に対して1%(実現可能性1%)。これは、100人に1人が、決済手段として仮想通貨がキャッシュレスの中心になっていくものと思っていて、その人は熱心に余剰資金を仮想通貨につぎ込んでいる状態です。
これが100人に2人になるとその倍の80兆、100人中100人なら4000兆ということになり、今でいうなら100人に1人未満がその世界がくると思っている状態です。そのような感覚で捉えると、イメージしやすいのではないでしょうか。
これが2人、3人と増えていけば時価総額も大きくなっていくはずですが、いきなりそうなる訳ではありません。人々の間で、現実感や期待感が高まるには「ユースケース」が必要になってきます。
ユースケースの必要性
ユースケースとは何かというと、暗号資産、仮想通貨自体が利用される場面です。ただし、それはビットコインで決済ができるというものではないと思っています。
暗号資産の中で、実体経済との紐付きが強いトークンが1個1個生まれ、それらが市場に取り込まれ新陳代謝していく。そのような状態が理想的です。
ユーティリティトークンとしても使えるし、資産価値としての側面ももつ多様な銘柄というのが、しっかり新しく生まれてきて、それがリスティングされて、取引されていく。その中で、ベースとなるサービス自体の価値が上がることで、トークンの価値も上がるということを実現できるかがカギではないでしょうか。
ビットコインなど主要通貨の役割はどうなるか
ビットコインやイーサリアム、リップルというような今の主要な通貨は、基軸通貨という形で、多様な暗号資産を交換する際のハブとなることができます。
理論上は、仮想通貨同士、暗号資産同士の交換は全ての組み合わせでできますが、実際の取引というところでいくと、基軸通貨があり、それに対して銘柄が構成されることになります。
また、社会経済との紐付きが強いものという意味でインパクトがあるものが出てくれば、それが全体の市場を押し上げながら、交換価値の基軸通貨の価値を上げていくということも考えられます。
基軸通貨の価格を押し上げるのであれば、それらを持って放置するというのではなく、そこから移れる先のより大きなものがあることで、基軸通貨自体が価値を押し上げられる、つまり、ニューマネーを吸い込むことができます。
新銘柄取り扱いにおける日本の状況
日本における新規銘柄取り扱いは、非常に慎重な状態が続いています。
我々としては、新しい銘柄を取り扱うことで市場を活性化させて、市場全体の規模を押し上げていくというようなことが出来ればと思いますが、現状は厳しいです。日本の法制度における規則に従うと、複数の銘柄を一度にというのは難しく、本当に1個1個数銘柄ごとにという形になります。
逆にいえば、その数銘柄というのを、社会経済との紐付きが強く、実際にそれをユースケースとして使える場があり、そのサービス自体の発展に伴ってトークン価値が上がっていくような仕組みになっているものを、しっかりと捉えて厳選していきたいと思っています。
そういったものを発掘しながら取り組みを進めているというのが今の状況です。単に言葉だけで、将来的に汎用的な決済に使える、いわゆるデジタルマネーになっていくというものは、もう発展は難しいでしょう。
ユースケースのあるトークンが生まれやすい産業とは
ユースケースもあり、サービスの発展に伴い価値を上げていくといったトークンが、例えば自動車産業から出てくるのは想像し難いです。生み出されやすい領域でいうなら、基本的にはインターネット産業のようなところでしょう。
すでに出てきているところでいうと、ゲームや、広告・SNSといった領域です。
いわゆるゲーム内通貨的なものだったり、特定のコミュニティ内で通用するトークンのようなものが、リスティングされていくことで、また、すでに存在するサービス自体のユーザーが増えて活性化することで、トークン価値が上がっていく。そのようなものが足元では出やすいと思っているし、出てきてくれたら嬉しい。
自分がそれをさほど使う機会がなくても、使える場所があり、例えば海外から人気があれば、その市場で価格が上がっていく。そのように海外市場で発展していくものをアセットとしてもてたらいいと思います。
我々が取り扱いたいのは、そういった具体的なユースケースがすでにあるものです。将来的に汎用通貨になりますみたいなものを、これ以上僕らが扱ってるものに加えてもしょうがないと思っています。
ただ、せっかくいいものを発掘してリスティングしようとしても、それに2年かかってしまうというのが現状で、それでは旬を過ぎてしまうかもしれません。慎重であることは重要ですが、そこは業界全体でがんばっていきたい部分です。
仮想通貨業界の今後に必要なものは「金融業界のコモンセンス」|DMM Bitcoinコラム③
法改正にともない、管理体制の強化が求められる仮想通貨交換業。それらが金融業界の枠組みに組み込まれていく中で必要な「コモンセンス」とは?次回記事ではその点についてお話していきます。
引用元: CoinPost
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