海外の仮想通貨取引所で広がる『裏口上場』とは|金融庁参与の経歴を持つフィンテックセンター長は懐疑的な見方も
- 海外の仮想通貨取引所で広がる『逆さ上場』|メリットとデメリット
- 海外の仮想通貨取引所の間で、既存金融市場への上場企業を買収して上場する「逆さ買収」の動きが広がりを見せている。実際の事例と、金融庁参与の経歴を持つフィンテックセンター長「岩下直行」氏の見解も紹介。
海外の仮想通貨取引所で広がる『逆さ上場』|メリットとデメリット
ロイターの報道によれば、海外仮想通貨取引所の間で、既存金融市場への上場企業を買収して上場する「逆さ買収」の動きが広がりを見せているという。
資金調達を図るとともに、金融業界のメインストリームに食い込む狙いがある。
逆さ買収を行うことで、新規株式公開(IPO)のような厳しい規制や審査を受けずに株式を公開できるメリットがある。
懐疑的な意見も
その一方、逆さ買収については、専門家の懐疑的な見方もある。
このニュースに対し、金融庁参与の経歴を持ち、2016年4月に新設されたFinTechセンターの初代センター長を務める「岩下直行」氏は23日、公式ホームページで、暗号資産交換業者による「逆さ買収」について、問題点があると指摘。
「交換業者がトラストポイントになっているにも関わらず、自らが信頼されるための仕組みが提供できていないことの証左だ。」「逆さ買収」なる手段を使ったところで、「交換業者としての信頼性」を得ることは難しいとの見解を示した。
今の暗号資産が「金融サービス業の本流に食い込む」ことがなぜ絶望的なのか、わかりやすく解説されているので、ぜひご覧いただきたい。
裏口上場とは
仮想通貨交換業者が既存の上場企業を買収することで、伝統金融サービスの世界に「裏口上場(‘back door’ listings)」のようにして参加を試みる企業が相次いでいる。
最近の取引では、2月11日に米ニューヨークの仮想通貨ブローカー企業Voyage Digital Holdingsが、上場後に操業停止していた貴金属採掘会社「UC Resources」社の全株取得後、社名を「Voyager Digital(Canada)Ltd.」と改名し、トロント証券取引所を所有するTMXグループの子会社、TSXベンチャー取引所に裏口上場を果たした。
「裏口上場」とは
裏口上場とは、非上場会社が既存の上場会社を買収して「経営権」を握り、証券取引所の正規の審査を免れて、事実上の上場を果たす方法だ。
ただちに違法性を問うことは出来ないが、証券取引所が「上場会社が実質的に存続しなくなった」と判断すれば、審査するための猶予期間に入り、上場廃止となることも有りうる。
相次ぐ裏口上場(逆さ合併)の動き
不適当な合併等を呼称する「逆さ合併」として知られるこのような買収方法は、厳格な新規株式公開(IPO)の手続きや綿密な規制上の精査なしに、企業が上場することを可能にする。
1月には、仮想通貨取引所OK Coin社の創業者Star Xu氏が経営権を握るOKC Holdings社は、香港上場の建設会社であるLEAP Holdingsの株式60.5%を4億8400万香港ドル(6169万米ドル)で取得。
さらにその数日後、韓国の仮想通貨取引所Bithumbの親会社は、Blockchain Industries社の買収による米株式市場上場計画を発表している。
また、ANX International社は、社名を変更したBranding China Group (BC Group)とは別個の主体のままであるが、上場して株主構成が変わって以後、仮想通貨の取引および取引所を含む新しい事業を立ち上げた。
BC Groupのスポークスマンは、上場していることで顧客に「私たちが信頼できる会社であり、長期的にこの市場で営業を行う意思があることを顧客に信じてもらえる」と述べた。
金融メインストリームへの参入に活路を求める
専門家は、このような取引によって、仮想通貨業界の金融メインストリームへの参入障壁を下げる目的があるとの見解を示している。
仮想通貨、中でも取引所の評判は、価格の不安定さ、今問題になっているハッキングやインフラストラクチャの障害も相まって、マネーロンダリングに使用される懸念などから、大きな打撃を受けている。
昨年、ニューヨークの検事当局は、いくつかの仮想通貨取引所は市場監視の不備と利益相反が横行していると警告し、一部は違法な業務が行われている疑いがあると述べた。
また今月、カナダの仮想通貨取引所Quadriga社で、顧客から預かっていた1億3,700万米ドルの仮想通貨のほぼ全てが凍結された。取引を一人で管理していた創業者が亡くなってしまったことで、コールドウォレットへのアクセスが不可能となってしまったためである。
仮想通貨市場は中・長期的な下落トレンドにあるが、その背景を受けて、金融市場コンサルタント会社KapronasiaのディレクターであるZennon Kapron氏は、次のように述べている。
市場が下落し規制当局も不満を抱いているため、仮想通貨企業の金融メインストリームへの参入は、出口を探している投資家や創業者を満足させるチャンスとなる。
各国規制当局との攻防
仮想通貨取引所を運営する企業の上場は、各国規制当局にとっても難題となっている。規制当局は、仮想通貨取引の監督という問題に取組み始めたばかりだからだ。
日本の金融庁は、2016年に取引所を規制する最初の主要な規制当局となったが、それ以来、業界の自己規制に委ねる方向で規則を改定してきた。
米国では、ニューヨーク州がこれまでに、何らかの仮想通貨ビジネスを行う企業に、一握りのいわゆる「ビットライセンス」を発行している。
香港については、市場監視機関である証券先物委員会および香港証券取引所に対してコメントを求めたが回答がなかった。しかし、証券先物委員会の最高経営責任者、Ashley Alder氏は、仮想通貨取引によっては規制に服させるべきであり、その見極めも今年中に終わらせることを望んでいると語っている。
昨年、世界最大の仮想通貨マイナーが香港でのIPO計画を達成できなかったとき、香港当局はすでに仮想通貨ビジネスの持続可能性に疑問を投げかけている。企業上場のプロセスに精通している職員が、匿名で以下のように述べた。
仮想通貨取引所が香港上場企業の中で新たな暗号ビジネスを開拓し、上場企業の既存の事業を維持することで、新たなIPOとして扱われないとされる可能性があるが、非常に難しい綱渡りである。
さらに、香港証券取引所の上場委員会は、以下のように指摘している。
上場する前に会社の事業が持続可能であることに納得しなければならない。マイナーの入札は、ビットコインの相場が下落したためにビジネスモデルが機能しなくなる懸念があるため、認可が阻まれている。
裏口上場は、ほとんどの国で許容されてはいるが、香港の例など、規制当局によっては取引の性質を見抜き、場合によっては完全なIPOを要求することにしている。
これについて、香港の法律事務所Herbert Smith Freehillsのパートナーであるジェイソン・ソン氏(Jason Sung)は、次のように述べている。
仮想通貨企業は、業界の規制状況と不確実なビジネスモデルを考えると、上場への適合性を証明するのに苦労するかもしれない。
米国に目を向けているBithumb社のような取引所も、同様に認可が阻まれる可能性がある。SECは、国内で仮想通貨を販売する及び逆さ合併を行う企業の両方に対して、監督権限を有する。
米国の法律事務所Polsinelliの金融テクノロジーおよび規制慣行の会長であるRichard Levinは、次のように述べている。
企業の計画内容次第では、SECまたはCFTCからの承認を得なければならない可能性がある。
かかる「裏口上場」が規制当局による厳格な新規株式公開(IPO)の手続きや綿密な精査を潜脱する意図によるものなのか、それとも、低迷状態にある仮想通貨業界にあって出口を探している投資家や創業者を満足させる活路の一つとなるかどうか、私たちも注視したい。
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— CoinPost -仮想通貨情報サイト- (@coin_post) 2018年10月12日
引用元: CoinPost
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