ICOの分類と規制方針が明確に、仮想通貨ウォレット業務も定義|金融庁 第11回研究会
- 第11回金融庁研究会が開催
- 仮想通貨規制に関する第11回討議では、4月10日の第1回討議から過去10回に及ぶ討議内容を総括する形で、重点的に協議されたICO規制に加え、ウォレット業務の定義についても規制された。
第11回金融庁研究会が開催
金融庁にて12月14日(金)、仮想通貨関連業界の有識者が一同に介し、国内の仮想通貨規制に関する”第11回目討議”が開催された。4月10日の第1回討議から過去10回に及ぶ討議内容を総括する形で行われている。
今回はその中から、特に市場関心度の高い部分を抜粋して紹介する。
ICOについて
仮想通貨「ICO(Initial coin offering)」に関しては、詐欺的な事案や事業計画が杜撰な事案が多いと指摘されており、2018年以降、さまざまなトラブルが露見したことで、日本国内でも重点的に規制面が議論された分野と言える。
金融庁資料では、「トークン購入者はトークン転売できれば良い、トークン発行者は資金調達ができれば良いと考えている」と見解を示し、大半の仮想通貨トークンが投機需要のみで成り立っていると指摘。「規律が働かず、モラルハザードが生じやすい。」と断じている。
また、規制を行うにあたり、ICOの分類について3種類のクラス分けを行なった。
- 発行者が将来的な事業収益等を分配する債務を負っているとされるもの(投資型)
- 発行者が将来的に物・サービス等を提供するなど、上記以外の債務を負っているとされるもの(その他権利型)
- 発行者が何ら債務を負っていないとされるもの(無権利型)
株式市場などの有価証券で適用されている「金融商品取引法」との関係では、ICOにおいて発行されるトークンの購入者が発行者からの事業収益の分配等を期待し、かつ以下の条件を満たす場合、「集団投資スキーム持分」に該当することが考えられるとして注意喚起している。
① 法定通貨で購入されること
② 仮想通貨で購入されるが、実質的には、法定通貨で購入されるものと同視されること
規制の仕方
投資家保護の仕組みを重視した結果、投資性を有するICOに関する規制の仕方については、次のように取りまとめている。
- 発行者と投資家との間の「情報の非対称性」を解消するための、継続的な情報提供(開示)の仕組み
- 詐欺的な事案等を抑止するための、第三者が発行者の事業・財務状況についてのスクリーニングを行い得る仕組み(株式市場のIPOでの主幹事証券会社による審査義務など)
- 不公正な行為の抑止を含め、トークンの流通の場における公正な取引を実現するための仕組み
- 発行者と投資家との間の情報の非対称性の大きさ等に応じて、トークンの流通の範囲等に差を設ける仕組み
ただし、公式資料の仮想通貨ICOについて全面禁止を謳うものではないと注釈を入れており、一部肯定する姿勢も見せている。
「一方で、将来の可能性も含めた一定の評価もあることを踏まえれば、現時点で禁止すべきものと判断するのではなく、適正な自己責任を求めつつ、規制内容を明確化した上で、利用者保護や適正な取引の確保を図っていくことを基本的な方向性とすべきと考えられる。」
仮想通貨の呼称変更
そのほか、仮想通貨の呼称を暗号通貨に変更する件については、国際的な議論の場において、“crypto-asset”(暗号資産)との表現が用いられつつあるとし、国際的な動向等を踏まえれば、将来的に「暗号通貨」と呼称を統一する可能性についても十分あり得ると言及。
FATF(Financial Action Task Force)や諸外国の法令等で用いられていた“Virtual currency”の邦訳であることを理由に挙げている。
ただし、上記にもある通り、「仮想通貨」という呼称がすでに一般的に認知されていることから、急に変更する場合の弊害も考えられる。取引所などの仮想通貨関連サービスや投資家の混乱をきたすことになるため、変更するとしても一定の猶予期間を設けるものと思われる。
仮想通貨ウォレット業務の定義
なお、仮想通貨ウォレット業務の定義についても、興味深い言及がされた。
金融庁は、現行の資金決済法上、「仮想通貨の売買・交換やそれらの媒介・取次ぎ・代理に関して顧客の仮想通貨を管理することは、仮想通貨交換業に該当する」としており、仮想通貨の売買等は行わない場合は、これに該当しないと定義している。
しかし、仮想通貨カストディ業務については、サイバー攻撃による顧客の仮想通貨の流出リスク、業者の破綻リスク、マネーロンダリング・テロ資金供与のリスク等、仮想通貨交換業と共通のリスクがあると考えられると言及。ウォレット業務を行う業者について、仮想通貨カストディ業務の一種だと定義した。
先日発足した、金融庁認定の仮想通貨規制団体『JVCEA』の加盟基準でも、ウォレット関連企業などを「第三種会員」として対象に含み、仮想通貨交換業者以外にもルール整備の適用範囲を拡大していくことを示唆している。
一定の強制力を持った”業界自主規制ルール”の対象となれば、市場の不透明感が払拭され、安心感にも繋がることから、このような動きが今後加速する可能性も考えられる。
過去の議題と資料一覧
なお、金融庁研究会における、過去の議論は以下の通りとなる。
開催日 | 主な議題 |
---|---|
第1回
2018年4月10日 |
「仮想通貨交換業等に関する研究会」の設置について。「一般社団法人日本仮想通貨交換業協会」が、仮想通貨交換業17社(コインチェックなどみなし業者含む)による国内取引量などの資料を開示。
(CoinPost記事)(議事録) |
第2回
2018年4月27日 |
匿名性通貨や登録審査、仮想通貨交換業者に対するこれまでの対応、仮想通貨等を巡る国際的な議論の状況
(CoinPost記事)(議事録) |
第3回
2018年5月22日 |
仮想通貨やブロックチェーンにはどのようなリスクが存在するのか、仮想通貨交換事業者をどう規制していくか、規制とイノベーションのトレードオフの関係をどう位置づけていくか
(CoinPost記事)(議事録) |
第4回
2018年6月15日 |
仮想通貨のマーケットや規制の現状について解説、ブロックチェーンの「51%攻撃」について議論。
(CoinPost記事)(議事録) |
第5回
2018年9月12日 |
これまでの議論の整理、仮想通貨交換業者の検査・モニタリング中間取りまとめについて |
第6回
2018年10月3日 |
テックビューロ社における仮想通貨外部流出事案について |
第7回
2018年10月19日 |
仮想通貨を原資産とするデリバティブ取引について(FXの最大レバレッジなど)
(CoinPost記事)(議事録) |
第8回
2018年11月1日 |
Initial Coin Offering (ICO)に係る規制のあり方について
(CoinPost記事)(議事録) |
第9回
2018年11月12日 |
仮想通貨の呼称、日本で業務を行うウォレット業者、仮想通貨のインサイダー取引、仕手グループの相場操縦行為について
(CoinPost記事)(議事録) |
第10回
2018年11月26日 |
ICOに関する海外での調査・報告など
(CoinPost記事)(議事録)(資料) |
第11回
2018年12月14日 |
一年間の総括
(CoinPost記事)(議事録)(資料) |
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— CoinPost -仮想通貨情報サイト- (@coin_post) 2018年10月12日
引用元: CoinPost
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