英臨時閣議でEU離脱をめぐる「ブレグジット合意案」承認も前途多難:仮想通貨市場にも動揺が波及する可能性
- ブレグジットで金融市場が混乱
- 英国のメイ首相が「EU離脱協定の合意案」を承認、これに伴い大臣が辞任したことに伴い、政情不安で英ポンドが急落するなど、金融市場に動揺が広がっている。最終的な離脱期日となる2019年3月29日は、仮想通貨市場にも影響を及ぼす可能性がある。
- ブレグジットとは
- Britain(英国)とexit(離脱)を組み合わせた造語
EU離脱担当相を含む2閣僚と2閣外大臣が辞任
イギリスのテリーザ・メイ英首相は現地時間11月14日夜、13日に英国と欧州連合(EU)が合意したブレグジット(Brexit=英国のEU離脱)に関わる「離脱協定の合意案」、ならびに政治宣言が英国の閣議で承認されたと発表した。
5時間を超える臨時閣議で、閣僚の同意を勝ち取ったメイ首相は、記者団を前にした声明で上記のように述べたが、その予想は翌朝に現実のものとなった。
前任のデイビスEU離脱担当相の辞任を受けて、今年7月に就任したラーブEU離脱担当相が辞意を表明、その理由として、離脱交渉でも最大の障害となってきた「英・北アイルランドとアイルランドの国境問題」に対する対応を挙げた。
また、マクベイ雇用・年金相も「閣議に提出された協定案は、国民投票の結果を尊重していない」とメイ首相に書簡を宛て、辞任。
さらに、与党である保守党内でも、党首としてのメイ首相に対する不信任投票を求める動きが広まっている。 保守党離脱強硬派のリースモグ議員は、14日の閣議終了後直ちに保守党議員への書簡を公表し、議会での否決を訴えるとともに、翌15日には、メイ首相の党首としての不信任投票を求める書簡を党に提出した。
EUと英国が合意した「離脱合意草案」は、585ページにも及ぶもので、EU側はこの交渉で「決定的な進捗」があったとしており、11月末に開催が予定されているEU加盟国の特別首脳会議(EUサミット)で、離脱協定への署名と政治宣言の採択が行われる見込みとなっている。
EUサミットでの承認後、英国政府は、合意案を英国議会下院に持ち帰り、年内にも投票により、その可否を問う。
しかし、その離脱協定の実現に固い決意を持って臨んでいるメイ首相の立場は安穏なものではない。 合意案への反発は、野党だけではなく、与党保守党の中にも急速に広がっており、EU離脱の前途は、ますます不透明になってきている。
金融市場への影響
このような政情不安をきっかけとした混乱は、世界の金融市場にも動揺を与えている。
15日午後、英ポンドは米ドルに対し1.30%下落し、1.30ドルから1.28ドル以下に低下した。
これは、2016年10月以来最大の1日の下げ幅となっている。 対ユーロでは、ポンドは2%減の1.13ユーロに達した。
急落の様子は、下図。
また、イギリス経済の先行きへの懸念から、ロンドン証券取引所では、英国内事業関連のFTSE上場企業の株式が大幅に売られ、中でも、Royal Bank of Scotland株は、▲9.6%という最大の下落幅を見せ、時価総額28億ポンド(約4,064億円)を失う結果となった。
2016年6月当時は、事前調査でも英国民投票でブレグジット回避を見込んでいたことから、「賛成51.9%」でEU離脱が可決したことが”ネガティブサプライズ”として市場を揺るがす格好となり、日経平均株価は、16333円から1286円(7.92%)安の大暴落を記録している。
ブレグジットの先行きの不透明さは、特にイギリス国内経済と関連の深い、銀行、小売業、住宅建設業関連株価に影響を与えているが、英金融行動監視機構(FCA)は、市場のボラティリティに関して、証券取引所、大手銀行、資産運用会社との定期的な連絡を取り、対応を図っていると述べている。
2016年6月に行われた、イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票に端を欲したブレグジットは、2019年3月29日に最終的な離脱期日を迎えるが、英国議会で離脱協定合意案が可決されない場合は、「合意なき離脱」に至るリスクもあり、イギリス国民生活に与える影響や、イギリス国内市場の混乱に止まらず、世界経済(および仮想通貨市場)にもその余波は及ぶものと警戒されている。
直近では相関関係も
2017年以降、株式(or為替)市場と仮想通貨の両市場に投資している個人投資家が増加の一途をたどっていることで、一定の相関性も認められるようになってきた。
例えば、2008年リーマン・ショックに匹敵する下落幅を見せた「10月の株式相場」において、先物指数が急落した2018年10月11日の寄り付き直後は、株の大幅ギャップダウン(約定していない状態)に重なるようにして、同時刻にBTC価格も暴落したことは記憶に新しい。
VIX(恐怖)指数など、投資家心理は金融マーケット全体で連動するほか、信用維持率が急低下した投資家が、株の暴落に耐えるため(あるいはリバウンド狙いの資金捻出のため)、保有する仮想通貨を売却して現金化する投資家が相次いだとの指摘もある。
いずれにせよ、メイ首相率いる英政府と、イギリス議会の動向が注目される。
引用元: CoinPost
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