ICOの契約内容はコードに反映されていない、ペンシルベニア大学の研究者が調査
ペンシルベニア大学ロースクールの研究者がイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に関するリサーチ・ペーパーを公開した。Coin-Operated Capitalism(コインによって運営される資本主義)という名のタイトルが付けられたリサーチ・ペーパーは、Shaanan Cohney氏、David Hoffman氏、Jeremy Sklaroff氏、 David Wishnick氏によって作成された。ICOを金融イノベーションの一種であると位置づけながらも、現状は問題点も多くホワイトペーパーに記された約束が守られていないことが多い点を指摘している。
リサーチ・チームは、2017年に発行された上位50位のICOを対象に調査を行った。調査の結果、内部取引などのインサイダー行為が確認されており、プロジェクトの管理体制の不透明性が浮き彫りとなった。また「トラストレス」を謳っているものの、運営側の意思でプログラムを変更することができる仕様になっているものもあり、プロジェクトの趣旨と矛盾する点が存在することが報告されている。
ICOはベンチャーキャピタル投資、株式、IPOなどの金融取引の一部に分類され、契約書がスマートコントラクトと呼ばれる一種のプログラムによって作成される。2017年に大きな資金調達を成功させたICOの数は200に上り、調達額は4200億円を記録している。2018年には、7月までに行われたICOが430あり、その金額は1.1兆円に上る。ICOの数と調達金額をみれば、昨年よりICO市場が大きくなっていることがわかる。
ICOとIPOの違いは、資金調達のために発行されるものがトークンか証券かである。このリサーチ・ペーパーでは、ICOを活用した資金調達制度の不備を以下のように説明している。
「IPOは企業の資産の一部を証券化したものだが、ICOは企業のプロダクトを利用することができる権利をトークン化したものだ。仮にコカ・コーラが自動販売機を作るためにICOを行った場合、投資家はコカ・コーラの企業としての価値ではなく、トークンの価値を重要視することになる。ICOは、発行者と投資家の間で結ばれる一種の契約書であると考えられるが、発行者に対する法的拘束力がない場合が多い。例えば、トークンの供給量を制限したり、トークン以外を使ったコカ・コーラ商品の売買の禁止や、自動販機の製造を義務付けるなどが必要だ」
イーサリアムのERC20を活用すれば、最小50行のコードでトークンの名前、供給量、ティッカーシンブルを設定しICOトークンを発行することができる。ICOの低コストで資金調達を行える点はイノベーションと呼べるが、法的な拘束力がないため詐欺などに使われることが多い。この点を改善するためには、技術、金融、法律の3つ観点からICOの発行プロセスを見直す必要がある。
ICOに使われるスマートコントラクトは、ある出来事が起きた時に、前もって設定されたプログラムが自動で実行される。このためスマートコントラクトはある種の法律の役割を果たす。しかし現状このコードの管理体制に問題があり、ICOを通じたコントラクトの内容とコードが一致しない場合が多い。
リサーチ・ペーパーでは、ICOで活用されるスマートコントラクトのコードの監査や管理体制、法的効力の欠如が改善点として挙げられている。しかし、ICOを通じた資金調達額は増加傾向にあり、リサーチ・チームは技術革新も加味しICOが一過性のブームであるとは考えていない。また、契約書は法律家が扱うものとして考えられてきたが、将来的にプログラマーが法律家となりスマートコントラクトを扱う時代が来る可能性についても言及している。
引用元: ビットコインニュース
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