ブロックチェーンのビジネス活用を検討する上での第一歩
今回の記事は、「SBI R3 Japan」が公開しているMediumから転載したものです。
より様々な内容の記事に興味のある方は、是非こちらにも訪れてみてください。
- 目次
はじめに
これまでの弊社連載記事では、ブロックチェーンおよびCordaについて、技術的特徴やビジネス事例を中心に紹介を行ってきました。記事を読んでいただいている方の中には、自社の関わる業務の中でどのようにブロックチェーンを活用出来るか、興味のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回の記事では、実際にブロックチェーンの活用を考えたときに生まれる課題について考えていきたいと思います。
ブロックチェーンのビジネス活用検討を実施する上での2つの課題
ブロックチェーンに興味を持っていただいた企画担当者の方が、自社ビジネスへの活用を検討する際に、悩む課題は大きく2つあると私は考えています。
- どのような業務にブロックチェーンを活用可能かがわからない
- 何故ブロックチェーンを利用する必要があるのかがわからない(Why Blockchain?)
この2つの課題は、ブロックチェーンを勉強し始めたばかりの方にとって、悩ましいポイントです。
ですので、それぞれ解説していきます。
どのような業務にブロックチェーンを活用可能かがわからない
過去記事の中でも、(エンタープライズ向け)ブロックチェーンの様々な特徴を挙げておりますが、私が考える一番のポイントは、「改ざんされていないことが保証されているデータを、異なる組織間で容易に共有(および更新)が可能であること」です。このポイントが情報のサイロ化の解消を実現し、スマートコントラクトの活用による時間&人的コストの削減をもたらします。
ですので、まずはこのポイントを意識して、改善する余地のある業務や新たなビジネス等を考えていくことが良いと思います。
そのうえで助けになることが、既存のブロックチェーン活用事例について理解を深めることです。
弊社が推進するCordaについては、ビジネス上での課題を解決するために開発されたアプリケーション(CorDapps)が多数存在しているため、その中から事例を紹介させていただくことが可能です。
是非、以下の連絡先から、お気軽にご連絡下さい。
Facebook:m.me/R3DLTJapan
Twitter:SBI R3 Japan(@r3sbi)
また、ご自身で確認されたい方は、英語でのご案内となりますが、Cordaの既存ソリューションが集められている「Corda Marketplace」をご参照下さい。
アプリケーション一覧/Corda Marketplace
仮にブロックチェーンを用いたシステム/アプリケーション開発を行う場合において、求めるシステムを1からスクラッチ開発するより、既存のソリューションをカスタマイズする形を採用することで、開発期間やコストを削減できるパターンも多いです。
まずは既存事例の理解を通して、どのような業務にブロックチェーンを活用したいのか、イメージを掴んでいただければ幸いです。
参考記事
(上記説明についてより深く理解されたい方は以下の記事をご参照下さい)
何故ブロックチェーンを利用する必要があるのかがわからない(Why Blockchain?)
ブロックチェーンの活用領域の検討に目途がつき、社内での調整を進める中で、次にぶち当たる課題が、関係者からの以下の疑問となります。
「これってブロックチェーンじゃなくてもよくないですか?(Why Blockchain?)」
実際に、ブロックチェーン黎明期には、「ブロックチェーン技術を活用したプロジェクトを何かしてみること」が優先されていたために、PoC実施後に上記課題にぶつかり、商用化まで至らない案件が多かったそうです。
(もちろん新しいテクノロジーを積極的に試してみることは大事なことです!)
では、「Why Blockchain?」の質問に対する回答例を考えていきたいと思います。
①これまでのシステムでは実現できなかったことが、ブロックチェーンにより活用できるようになる。
当たり前ですが、ブロックチェーンでしか実現できないことがあるのであれば、ブロックチェーン活用に異論は出てこないでしょう。
具体例をあげると、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)がLayerXと開発を進めるプロジェクト「Progmat(プログマ)」がその1つです。「Progmat」は、ブロックチェーンを用いて証券と資金の決済を自動化するプロジェクトであり、有価証券の発行段階から流通まで、自動かつ一括で行えるプラットフォームとして、開発が進められております。「Progmat」は、ブロックチェーンを活用することで、複数の機関や管理人が介在し、人手での処理が必要であるポストトレード業務を自動化することで、業務コストの低下や必要期間の短縮化を実現する構想です。そしてその結果、従来では業務コストや採算の観点から実現できなかった小規模商品の証券化を可能とし、新たな市場を創設する可能性を秘めています。
Progmatの概念図(MUFGリリースより)
このような事例であれば、課題に対する解決策としてブロックチェーンを利用することに異論は出ないでしょう。ただし、必ずしもこのようにブロックチェーンがぴたっと当てはまる案件ばかりではないです。
それでは、そのような場合はどのように「Why Blockchain?」へ回答していくべきでしょうか?
その答えが次の②となります。
②分散台帳で情報管理を行うことが、(開発+運用費用を考慮したうえで)既存システムのコストを下回ることを示す。
この回答については、ブロックチェーン等関係なく、何か新しいシステムの導入を検討する際には、必ず考慮されることだと思います。
よくブロックチェーンを活用するとコストが削減できると言われていますが、それは必ずしも正しいとは言えません。現状ではブロックチェーンエンジニアが少ないことから、開発に通常より費用が掛かるパターンも多く、エンタープライズブロックチェーンを利用するのであれば、保守費用とは別にコストがかかります。(Cordaの場合ノード管理費用等)
ただ、「改ざんされていないことが保証されているデータを、異なる組織間で容易に共有(および更新)が可能であること。」のメリットは、間違いなく大きなコストカットにつながります。
同じ組織内であれば、連携されたデータを基本的に信用することが多いと思います。しかし、別の組織とデータを連携する場合には、相手を信用しないことはないにしろ、データ確認が必要となり、その部分にコストがかかるからです。
たとえ「ブロックチェーンを使わなければいけない理由」が見つからないとしても、使った方が良い論理的な説明が出来れば、納得させることが出来ると、私は思います。(「ブロックチェーンを使ってはいけない理由」が存在するわけではないため)
参考記事
(上記説明についてより深く理解されたい方は以下の記事をご参照下さい)
終わりに
今回の記事では、「ブロックチェーンのビジネス活用を検討する上での第一歩」として、検討する際のポイントを説明させていただきました。
ブロックチェーンを活用したビジネスについては、参加するプレイヤー数が多いほど価値が出ることもあり、今後他社からの提案を受けるパターンも増えてくると思います。ですので、本記事を通してポイントを掴んでいただければ幸いです。
弊社、SBI R3 Japan では、エンタープライズブロックチェーンプラットフォーム「Corda」の導入支援および企画立案を行っております。ブロックチェーン案件については、様々な点でご協力できるかと思いますので、検討を行う際には、是非お声掛け下さい。
最後に宣伝となりますが、弊社は4/21(火)〜4/22(火)に開催を予定している、日本経済新聞社と金融庁主催の国際会議「ブロックチェーン・グローバル・ガバナンス・カンファレンス(BG2C)」、「フィンサム・ブロックチェーン&ビジネス(フィンサムBB)」にプラチナスポンサーとして協賛しています。弊社が推進する「Corda」に関係するセッションも設けられておりますので、是非お越しください。(新型コロナウイルスの影響により、イベントが予定通り開催されない可能性もありますので、あらかじめご了承ください。)
(記事作成:SBI R3 Japan/浅野)
引用元: CoinPost
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