ビジネス層が押さえておくべき「Amazon Managed Blockchain」のポイントとは
- 目次
はじめに
当メディアでは、様々なBaaS(Blockchain as a Service)や事例を紹介してきました。BaaSとしては、AWSやAzureなどがありますが、今回は小規模なプロジェクトを試験的に立ち上げてみたい方におすすめのBaaSである「Amazon Managed Blockchain」について解説していきます。
「AWS re:Invent 2018」でプレビュー版が発表され、2019年5月に正式リリースされた同サービスは、AWS上でブロックチェーンを簡単に構築し、管理可能です。
なお、BaaSの比較や目的に応じた選び方については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもぜひご覧ください。
▼詳細はこちら
BaaSを比較したい人向け~Azure vs AWS vs IBM (2019/12更新)
Amazon Managed Blockchainとは?
Amazon Managed Blockchainは、フルマネージド型でスケーラブルなブロックチェーンネットワークを、AWS上で構築・管理可能なBaaSです。2020年1月16日現在、「Hyperledger Fabric(v1.2)」のみに対応しています(2020年1月時点の最新版v1.4.4には非対応)。
また、将来的にはイーサリアムにも対応予定です(Enterprise Ethereumと考えられるが、詳細は不明)。
▼FabricやEnterprise Ethereumについてはこちら
「Hyperledger Fabric」もっとも利用される企業向けブロックチェーンフレームワークの概要
企業向けブロックチェーン「Enterprise Ethereum」とは?特徴やユースケースを解説
フルマネージド型サービス
Amazon Managed Blockchainはフルマーネジド型のサービスであるため、開発時にインフラ部分を考えなくて良く、ブロックチェーンネットワークを構築する際に必要な以下の管理コストがカットされます。
- ハードウェア(ノード)のプロビジョニング
- ソフトウェアのインストール
- アクセスコントロール用の証明書の発行・管理
- ネットワーキングコンポーネントの設定
- インフラストラクチャの監視
- ネットワークメンバーの管理
なお、フルマネージド型のBaaSとしては、Amazon Managed Blockchainの他にも「Oracle Blockchain Cloud Service」や「IBM Blockchain Platform」などがあります。
Amazon Quantum Ledger Database(QLDB)による透明性・監査性の向上
Amazon Managed Blockchainは、台帳管理専用のデータベースである「Amazon Quantum Ledger Database」を利用して、監査性ある形でブロックチェーンアプリケーションのログを取ることができます。アプリケーションデータに生じたすべての変更に関して、イミュータブルで暗号学的に検証可能な履歴を提供するのです。
なお、Amazon QLDBはブロックチェーン(分散型台帳技術)ではありません。データベースの所有者はあくまでもサービスを利用する主体のみとなっています。Amazon QLDBは、改ざん耐性があり、検証可能という点でAmazon Managed Blockchainと似ていますが、分散化や信頼できない参加者が前提となっている場合は、ブロックチェーンをサポートするAmazon Managed Blockchainを利用することになるでしょう。
また、フルマネージド型の暗号キー管理サービス「AWS Key Management Service(KMS)」を用いることで、Hyperledger Fabricの認証機関を管理・保護することも可能です。
Amazon Managed Blockchainでの構築プロセス
Amazon Managed Blockchainを利用したブロックチェーンネットワークの構築プロセスを簡単に紹介していきます。まず、前提として以下のリソースが必要です。
- AWSアカウント
- Linuxクライアント(EC2インスタンス)
- VPC
- インターフェイスVPCエンドポイントの作成権限
- 必要なポートで通信を許可するEC2セキュリティグループ
参考:Prerequisites and Considerations
ネットワーク構築の流れは以下の通りです。
- ネットワークと最初のメンバーを作成する
- エンドポイントを作成する
- クライアントをセットアップする
- メンバー管理者を登録する
- ピアノードを作成する
- チャンネルを作成する
- チェーンコードを実行する
- メンバーを招待して共同チャンネルを作成する
各ステップの詳しい説明は、以下のドキュメントをご覧ください。
参考:Get Started Creating a Hyperledger Fabric Blockchain Network Using Amazon Managed Blockchain
また、Amazon Managed Blockchainで構築されるHyperledger Fabricの基本的なコンポーネントは以下の通りです。Fabricネットワークのメンバーは、AWSアカウントの保有者に相当します。
参考:Key Concepts: Managed Blockchain Networks, Members, and Peer Nodes
Amazon Managed Blockchainの料金
Amazon Managed Blockchainの利用には初期費用はかかりません。現在提供されているHyperledger Fabricに関しては、ネットワークのメンバーシップやピアノード、ピアノードのストレージに対して時間あたりの使用料金が発生します。また、サービスには2つのエディションが提供されており、各エディションで価格が異なります。
その他、通常のAWSデータ転送料金と、Amazon Managed Blockchainリソースとやり取りする際に必要なVPC PrivateLinkエンドポイントの料金も請求されます。
参考:Amazon Managed Blockchainの料金
Amazon Managed Blockchainのユースケース
Amazon Managed Blockchainは既に、大手が関わるブロックチェーンプロジェクトで活用されています。利用者としては、以下のプロジェクトや企業が挙げられます。
- 自動車業界の巨大コンソーシアム「MOBI」
- 世界最大級の証券保管振替機関「DTCC」
- 世界最大の食品・飲料会社「Nestlé」
- シンガポール証券取引所(SGX)
各プロジェクト・企業に共通しているニーズは、ブロックチェーンによる監査性と透明性向上などのメリットを享受しつつ、アプリケーションの構築に集中したいという点でしょう。フルマネージド型であるため、インフラ部分の管理コストが削減されます。
まとめ:AWSユーザーやブロックチェーンを試したいユーザー向けのフルマネージド型BaaS
2020年1月時点で、Amazon Managed BlockchainがサポートしているブロックチェーンはHyperledger Fabric(v1.2)のみですが、フルマネージド型のAmazon Managed Blockchainは、ブロックチェーンで様々な実験を行いたい方向けのBaaSだと言えるでしょう。さらに、AWSを普段から使っている方であれば、比較的学習コスト低くブロックチェーンネットワークを構築できます。
また、詳細は以下の記事で解説していますが、最小構成の単価やパフォーマンスを考慮する場合、小規模なプロジェクトを実行する場合はAmazon Managed Blockchainがおすすめです。その他のBaaSとの比較も行っていますので、ぜひご覧ください。
▼詳細はこちら
BaaSを比較したい人向け~Azure vs AWS vs IBM (2019/12更新)
引用元: CoinPost
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