クリプトコレクション これまでの道のり
2016年秋、私はリクルーティングスタートアップでの仕事をやめました。金銭的な理由で仕事を選ぶようにと若者に説くことに嫌気がさしてしまったのです。
私は何をすべきか、頭を巡らしました。旧来のスタートアップ市場には実現可能性に不安があったので、他社に乗り換えるのは気が乗りませんでした。この業界では前途有望なプロダクトが溢れ、競合状態が続いていました。そんな時にピーター・ティールの「ゼロ・トゥ・ワン」という本を読んで、既存のプロダクトを改善するより新たな市場に進出しようと思ったのです。
この沈滞期間中、偶然にも247 ETHのジェネシス・キティに関するテッククランチの記事を見て、私は初めてCryptoKittiesの存在を知りました。
247 ETHで取引されたジェネシスが目を引きました。
私はこのプロダクトにとても興味を惹かれました。というのも、バニーベイビーズ市場が崩壊した理由の一つとして、アイテムが本物かどうかの見極めが難しいということがあったと思います。私は大学時代、バニーベイビーズに関するリサーチをしていたので、コレクション(ERC721 トークン)のゲノムデータをイーサリアムブロックチェーン上に保存するというAxiom Zenのアイデアには、大きな感銘を受けました。
加えて、私は父とともに昆虫や化石を採集しながら育ったので、昔からコレクター精神を持ち合わせていました。珍しいキティをブロックチェーン上で育成し売買するというのは、私にとって夢のようでした。
私は昔からコレクターでした。
CryptoKittiesは、分散型ゲームにのめり込むきっかけとなりました。私はメタマスクウォレットに0.8イーサリアムを購入し、ネコを育成するために市場を調べ始めました。
数カ月にわたり、1日20時間を市場調査と育成に費やしました。2,000匹ほどキティをコレクションし妥当なイーサリアムを稼げるまでになりました。私はキティ市場の他にINSについても学び、ついには腕利きのチェイサーとして知られるようになったのです。
さらに私は、コミュニティ指揮としてキティハットチームにも加わりました。我々はERC20トークンをERC721に結びつけた最初のチームとなったのです。CryptoKittiesのDiscordで私を見出してくれたダンとジョメッシンには感謝しかありません。
初期の熱量が収まり、利益も上がらなくなってきた時、コミュニティは問い始めました。次は何がくるのか?
CryptoKittiesがローンチする時、ブロックチェーン上で育成できるバニーベイビーズのようだと称されました。しかし、コレクションの価格が下落すれば流行は下火になってしまうだろうという問題は、バニーベイビーズと同様に発生するでしょう。事実、dappsvolum.comによると、CryptoKittiesのスマートコントラクト内には77,000のアカウントが存在するにも関わらず、1日に利用するのは400アカウントほどに限られているということです(dappradarより)。最新の始祖ネコは8イーサリアムで売買されましたが、12月の流行のピーク時に記録した254イーサリアムと比べるとかなり低価となっています。
コミュニティはCryptoKittiesを現実のものではなく、単なるデータプラットフォームとして捉えました。実物としては存在しませんが、育成可能なゲーム上のお金とも言えるかもしれません。
KittybattlesやKittyracesなどのプロジェクトはまだ開発が始まったばかりですが、コミュニティに到るまでのゲーム開発進めるべきか退くべきかというのは、時間が経ってみないとわかりません。
CryptoKittiesがモバイルアプリと中国でのローンチに失敗した3月中旬、それまで耳にしたことがなかったAxie Infinityというプロジェクトの開発者が私の元にやってきました。彼曰く、CryptoKittiesの初期から私に注目し、イーサリアムの小さな取引からCryptoKittiesのブリーダー・ストリーマー・コミュニティマネージャーまでに至る私の経歴に感銘を受けていたということらしいです。
その開発者というのが、クリプトキティゲノムの解析を行なっていたチュン・グエン氏です。我々は、現在のブロックチェーンゲーム業界にはERC721トークンの有効性を付与しうるゲームが必要だという見解に至りました。プレイヤーの時間や努力をトークンの価値を高めるために使え、且つプレイ自体は無料でできるゲームです。CryptoKittiesは、所有権の価値やゲーム内アイテム交換市場の機能においてブロックチェーンが有用であることを示しましたが、実際に没頭できるようなゲーム体験を実現することは難しかったと言えます。つまり、CryptoKittiesは「遊ぶ」というよりは「稼ぐ」ものだったため、利益が得られなくなれば人々は「ゲーム」からは離れていくでしょう。
アクシーインフィニティは、いわば「二番手の利点」を持っていました。我々はCryptoKittiesの4つの欠点を分析し、それらを避けてゲーム設計をすることができたのです。
- 育成にかかるコストのせいで、新たなCryptoKittiesプレイヤーがいなければ、多くのイーサリアムは結果的にオートバーサーに流れることになります。オートバーサーというのは、キティのゲノムデータの検証を競い、それによって報酬を得るマイナーのことを表します。
- ただ時間を費やし努力するだけではクリプトキティの価値を高めることはできません。事実、クリプトキティを育成するだけでは、その価値は下がるばかりです。プレイによってトークンの価値が下がってしまうです。理想的とは言えません。
- 現在キティの有効性はほぼ無いため、希少性や芸術性によって価値を上げるしかありません。新たなプレイヤーは育成方法やゲノムシステムを学ぶのは大変なので新規利用者にとっては大きな障害となりますし、「最初のキティは何を購入すればいいのか」というのはとても難しい問題です。
- Axiomは第0世代のキティを50,000体に制限しています。しかしこれは、大なり小なり将来的にユーザーベースに依存する形になり、自ら袋小路に追い込んでしまっているのです。多くのコミュニティメンバーが11月以降のゲームの行く末を危惧しています。
我々がプロダクトを設計する時は、これらの4つの欠点を考慮した上で新たなソリューションを提示しました。例えば、完全分散型の自動生成システムではなく、アクシーを作り出す第三者のオラクライズを使いました。これによって、CryptokKittiesでは0.008イーサリアムだった育成料を0.002イーサリアムまで抑えられています。
しかし、ただCryptoKittiesの育成・売買システムを最適化するだけではいけません。ティールのゼロ・トゥ・ワンにあったように、新たな市場を生み出すには全く異なるレイヤーに乗り出さなければならないことを我々は知っていました。
そしてそれは、バトルとテラリウムシステムとして形になりました。
アクシー空間では、プレイヤーは3アクシーでチームを組むことができます。CryptoKittiesと同様に、それぞれのアクシーは独自のゲノムを持っており、6つのボディパーツによって構成されています。これらはアクシーバトルで使用できるバトルムーブに対応しています。
アクシーはバトルによって経験を積み、既存のボディパーツをアップグレードさせることで新たなバトルムーブを開放できます。私たちはこの進化の要素こそが、夢中になるゲーム感覚を伴った分散型ゲームたる所以だと考えています。
既存の分散型ゲームが抱えるもう一つの問題として、ブロックチェーン上での検証が必要なことから高い料金が発生するということがあります。この解決に当たって、我々はルームネットワークと協同し、彼らのサイドチェーンをゲームで実装しました。開発についてはこちらをご覧ください。
我々はテラリアムというシステムも開発しています。ERC721トークンが、アクシーそのものと同様に、まるで本物のペット小屋のような彼ら用の部屋を作り出すのです。
将来的に、アクシートレーナーは専用のテラリアムでアクシーを管理し、それらをトークン化した装飾品や戦利品でデコレーションできるようになります。アクシーたちがバトル外で交流し、美しい設備に囲まれて過ごしている世界を想像してみてください!
Axie Infinityは現在、開発者2名、アーティスト4名、グロースハッカー2名という小さなチームで1000イーサリアムを売り上げています。軌道修正を繰り返す事業モデルとゲーム内トークン売り上げによる新たな資金調達メカニズムにより、分散型ゲームの潜在的な可能性がお判りいただけると思います。私は今ベトナムにいて、この夏アジアの様々な会議に登壇します。6ヶ月前は想像だにしなかったことです。
この業界の安定性は保証されている訳ではなく、分散型ゲーム開発者はエコシステムが崩壊しやすいことも理解しています。我々はプレイヤーの人々を我々の支援者として捉えています。私は、discordやtwitter、ライブ配信サービスを通して彼らと直接交流するのが好きです。開発者とコミュニティのコミュニケーションの場がなければ、信用が失われ、プレイヤーのペインポイントや期待に答えられません。
この業界で何が起きるかに言及するのは時期尚早です(Blizzardのような企業がブロックチェーンに乗り出して私たちは消えてしまうかもしれないので)。しかし、現在分散型ゲームにのめり込んでいる人々は、ゲーム開発者としての希望があると思います。実際に、既に数百万のユーザーを抱える従来のゲーム企業が我々のアドバイスを求めて来ているという事実は、我々が6ヶ月で培った知識が非分散型ゲームの開発者にとっても価値あるものだということを示しています。彼らは分散型ゲームの開発に苦心しており、我々の実績はそれに競合しうるということです。
著者名:ジホーズ
引用元: CoinPost
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