元リップル社員が語る「XRPがもたらしうる地政学的影響」
文責:xThinker(@xThinker1)
この度、XRP MEETUP JAPAN運営さんより、11月に開催されるXRP MEETUP JAPANに向けてのコラムの寄稿の依頼を承りまして、今回表題の記事の執筆をさせて頂きました。
このような貴重な機会を設けて頂き、XRP MEETUP JAPAN運営の皆様、NODEEの皆様並びに関係者の皆様に対して、この場をお借りして御礼を申し上げます。
僭越ながら、初めましての方に自己紹介をさせて頂きます!普段ブログ(https://xthinker.net/)を通じて、リップル社やXRPに関する記事を執筆しております、シンカー(@xThinker1)と申します。
元リップル社員があらゆる質問に答える
ブログの方で特に注力をしているのが、元リップル社員のボブ・ウェイ氏のリップル社やXRPに関する見解をまとめた”Bob語録”となっております。
今回寄稿させて頂く記事も、”Bob語録“の一つです。
下記で元リップル社員のボブ氏や、”Bob語録”についてより詳細に記しているので、併せてご参照して頂けますと幸いです。
”Bob語録”:https://xthinker.net/bobway-0
では早速本題の方に入っていきましょう!ボブ氏は色々な方から寄せられた質問や疑問に対して、一つずつ丁寧に答えながら、自身のリップル社やXRPに対する見解を展開しております。
今回クローズアップするボブ氏に対する質問は下記です。
XRPが国際金融システムにもたらしうる影響
『地政学』というワードを目にすると、少し取っ付きにくそうなイメージがありますが、要するに「XRPが普及することによってグローバル社会・金融・経済に対してどのような影響を及ぼしうるか」ということを今回の質問者は聞きたいのだと思います。
暗号資産のXRPや”xRapid”などのリップル社のプロダクトが普及し、活用の機会が増加した場合、既存の金融・経済システムに非可逆的な影響を及ぼしうる可能性があります。今回の質問は「XRPが金融・経済システムのみならずグローバル社会に対してどのような影響を及ぼしうるのか」、あるいは「そもそも、影響を及ぼしうるのか」、質問者は、その是非を元リップル社員のボブ氏に問いたいのだと思います。
上記の質問はXRPの可能性やリップル社の今後の展望をマクロな視点で掘り下げていくものとなっております。だからこそ元リップル社員のボブ氏にこの質問の回答をして頂くことに大きな意味があるのだと考えております。元リップル社員だからこそ持っている視点やリップル社のビジョン、今後事業運営をしていく上でのリップル社の大観をボブ氏の回答を通じて垣間見ることができるチャンスかもしれません。
早速回答の方を見ていきましょう。
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ボブ氏
「私が「地政学」なんて学術的な定義・枠組みを適切に援用できるか分からないけど、(リップル社の試みが成功したら)銀行事業の構造改革につながるよう大きな進展が見込めると思うよ。
銀行業に関して私が最も違和感に感じた点は、異なる国家に拠点を置いている銀行間で生じる不思議な事象だ。この事象は小国(新興国)に拠点を置いている銀行ほど顕著に発生する。
例えば「アリスというメキシコに住んでいる女性が、フィリピンに住んでいるボブとビジネスをしたいと考えている」と想定してみよう。
一見2カ国間でビジネスが執り行われるというシンプルな構図だが、アリスはMXN(メキシコ・ペソ)という法定通貨を使用しており、ボブはPHP(フィリピン・ペソ)という法定通貨を使用している。
アリスとボブが実際にビジネスを開始したとして、二人がそれぞれ滞在している国の銀行ではどのようにして取引の決済が執行されるのか?多くの場合、このようなケースではブリッジ通貨としてUSD(アメリカ・ドル)が仲介することが多い。これ自体は特に驚くことではないよね。ただ実際どのようにUSDは仲介するのか深く見てみよう。
メキシコの大手銀行がアメリカの大手銀行にコルレス口座を持っていたとする、例えばそのアメリカの銀行が”Citi Bank”だったとする。同時にフィリピンの大手銀行もアメリカの大手銀行にコルレス口座を持っていたとする、そのアメリカの銀行が”Bank of America”だったとする。メキシコに住んでいるアリスが、フィリピンに住んでいるボブにお金を送金した場合何が起きるのか?
送金元のメキシコの大手銀行がコルレス口座を持っている”Citi Bank”が”FedWire System”を通じてフィリピンの大手銀行と紐づけられている”Bank of America”の口座にお金が送金される。これらの一連の処理は全てSWIFTを介して行われる。ここまでは普通の話だよね?ただ、ここから僕がさっき言ってた「不思議な事象」の話をするよ。
“Citi Bank”も”Bank of America”もどちらもアメリカに本拠地を置いている金融機関なので、アリスからボブへの送金をアメリカ政府が敷いている法令に照らし合わせた上で正当なものであるか否か、コンプライアンスに則っているものであるか否かを(Citi BankやBank of Americaが)精査しなければならないことになっているのだ。もし仮に”Citi Bank”や”Bank of America”が送金を精査せずに、送金を承認してしまったとしましょう。
事後的にアリスからボブへの送金がアメリカの法令に準拠しているものでなかったことが発覚した場合、”Citi Bank”や”Bank of America”はアメリカ政府から多額の罰金を請求される可能性がある。つまりメキシコに住んでいるアリスが、フィリピンに住んでいるボブとビジネスができるかどうかは、全く関係のないはずの第三国に拠点を置くアメリカの銀行が送金を許可するか否かに大きく影響されるということになるのだ。アリスとボブの取引がアメリカの司法の管轄外で行われているはずなのにだ。
アメリカの銀行や金融機関は本来アメリカの国外で行われている国際送金の正当性、コンプライアンスに準拠しているか否かの確認、不正であるか否かの確認に膨大な時間と人件費を費やしているのだ。多くのアメリカの銀行は、上記の一連の作業に対して費用対効果を鑑み、採算が取れないと判断し始めているため、コルレス口座を閉鎖し始めている。アメリカ政府から罰金を請求されてしまうリスクが、コルレス口座を運営することで得られる効用を上回ってしまっているからだ。金融業界ではこの一連の動きを”the de-risking problem”(リスク軽減問題)と称している。
XRPのようなブリッジ通貨は、従来から続いている上記のような歪な構図にメスを入れ、国際送金システムにパラダイム・シフトを起こす可能性を秘めている。本来全く関係のないアメリカや第三国の金融機関を介さずとも、送金元・送金先の当事国の金融機関同士で直接送金を行えるようになる。事業者は国際送金をする際に送金に係るストレスが大幅に軽減されるため、無駄な時間と労力を割く必要がなくなり、その時間をより建設的なことに充てることができるようになる。(一部抜粋)(和訳文)(※簡略化のため、国家名や通貨の名称を変更していますが、本質的な意味や伝えようとしていることは原文を踏襲しております)
※英語原文:”I’m not sure I’m qualified to use fancy words like “geopolitical” correctly. But there are huge improvements coming to the structure of banking.
So “geopolitically” speaking, one of the weirdest things about banking is how the international relationships are structured. This is true especially among the smaller countries. Take a random made up example. Say Alice lives in Barbados and want to do a business transaction with Bob in Saint Lucia. It is just a standard two party business deal for services rendered. But Alice uses BBD and Bob uses XCD. So how do their banks settle that transaction?
Well it turns out in many cases they use USD. That sentence sounds pretty sensible not earth shaking to anyone… But how does that really work? Well it turns out that important banks in Barbados keep “correspondent” accounts with a large US bank. Let’s say Citi in this case. And some large bank in Sant Lucia also keeps a correspondent account with a US bank. Let’s say BofA in that case. The settlement actually happens by the Barbados bank telling Citi to wire money through the FedWire system to the St Lucia’s account at BofA. These requests are transmitted via SWIFT.
But the crazy thing is that US law says that both Citi and BofA need to screen the transaction between Alice and Bob for compliance with US laws! And if a bad transaction slips through, both Citi and BofA can be fined huge amounts. So in effect, whether Alice in Barbados can do business with Bob in St Lucia becomes dependent on whether or not US banks want to allow it. Even though the transaction doesn’t involve US jurisdiction at all!
The side effect of the US bank’s risk in these transactions is that they’ve started closing the correspondent banking accounts for entire countries. The risk is just seen as too high for the reward (fees) that they can charge. This is called in banking jargon, “the de-risking problem”.
A bridge currency like XRP changes that dynamic dramatically. Transaction that don’t involve the US (or other third countries) don’t have to travel through their systems to settle. That allows people to stop jumping through third party regulatory hoops and just get one with doing business.”(一部抜粋)
※ソース:https://www.xrpchat.com/topic/30588-hi-im-bob/?do=findComment&comment=677836
リップル社のビジョン
現行の国際送金システムのままでは、特に経済規模の比較的小さい新興国に拠点を置いている人(事業者)同士で何らかの国際送金・決済をする際に全く関係のない第三国の法令や規制が送金の障壁となり、スムーズな事業の運営が行えないという潜在的なリスクが存在することをボブ氏は示唆しています。
上記でボブ氏が挙げた、アリスとボブ間の取引の例において、アメリカは全く関係ないはずなのに、アメリカの法律や規制のせいでビジネスがスムーズに行かないという不思議な現象が起きています。
国際金融システムがアメリカなどの大国によって牛耳られていると言われる所以はこういった事例からも垣間見えます。結局何らかの国際送金、国際決済を行う際に、
- 時間的制約(送金に時間がかかる)
- 金銭的制約(送金に多額の手数料を要する)
- 不確実性(関係のない第三国の法令や規制に引っかかり、送金が執行されない可能性が出てくる)
という多くの制約や障壁が存在・発生するのです。このような状況が続くようでは、金融の民主化なんて実現しないですし、キャッシュや資産は大国に滞留・偏在しやすくなり、新興国には流入しにくくなってしまいます。
リップル社はこのような事態を特定の国家や組織に帰属せず、カウンターパーティリスクのないXRPを活用することで是正しようとしています。リップル社は主要プロダクトの一つである”xRapid”を普及させることで、新興国の金融機関が欧米の大手金融機関や”SWIFT”を介さずとも、国際送金や国際決済の執行を可能にしようとしています。既存の国際送金に係るあらゆる制約を受けずに、より円滑にかつ高速に国際送金が執行できれば、(新興国の金融機関は)浮いた時間やお金をより建設的なことに費やすことができるようになります。これがリップル社の目指す「価値のインターネット」のビジョンの一部なのです。リップル社が特に発展途上国や新興国をターゲットにしている理由もそのビジョンを実現するためなのです。
まとめ
『価値のインターネット』のビジョンを実現するため、リップル社はアメリカや日本などの経済立国のみならず、メキシコやフィリピンなどのいわゆる新興国をメインターゲットに事業を展開しております。
今回はXRPや”xRapid”などのリップル社のプロダクトが普及することによって、どのような地政学的影響があるかについてボブ氏の見解を交えながら、考察をしていきました。展望論にはなりますが、晴れてリップル社のビジョンが実現した場合、新興国発のビジネスは国際送金の大幅な効率化によりもたらされる効用を享受することで、国家や国境に規定されることなく、より自由に事業運営をすることができるようになるのではないでしょうか。結果として、新興国や発展途上国の経済活性化・経済成長に繋がる一つの原動力になり得るのではないでしょうか。議論が少々飛躍してしまいしたが、リップル社はその壮大なビジョンの実現のため、
- XRPの流動性の向上
- XRPを取り扱う取引所の拡大
- 提携金融機関の拡大
を着実に進めており、外堀を埋めていっております。
「千里の道も一歩から」なんて言いますが、これからも一人のXRP投資家としてリップル社とXRP普及の進捗を見守っていければと考えております。
今回の記事は以上となります。最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。
ここからは、運営によるファン主催のミートアップイベントXRP MEETUP JAPANのご紹介です。
XRP MEETUP JAPANに豪華ゲストが多数参加!
9月15日から9月22日までの期間限定で募集をかけたところ、定員を大きく超える588名ものご応募がありました。この場をお借りして感謝いたします。ありがとうございます!
また、このイベントには多数の豪華ゲストが来場される予定です!
HPにも載っていますが、Ripple社からも沢山のゲストが来場してくれる他、『アフタービットコイン』著者である中島真志先生、海外で有名リップラーであるTiffany Haydenも来場してくれます!
そして今回新たに、Ripple社からDocumentation EngineerであるRome Reginelli、そしてPerformance EngineerであるMark Travisのお二人が来場されることになりました!
詳しくはHPをご覧ください。
こちらから:https://xrpmeetupjapan.com/
皆様のご来場をお待ちしております。
- 前回の記事はこちら
- 前回のコラムでは、現在抱えている国際送金の5大リスクに対してXRPがどのようなソリューションを提示するのかについて紹介しています。今回のコラムの参考にもなりますので、ぜひ一読ください。
引用元: CoinPost
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