2019年は仮想通貨ステーキング元年!今後の動向を考察してみる|Fintertechコラム
Fintertech ストラテジーグループの川浪です。
弊社では仮想通貨のステーキングビジネスに大きく注目をしています。stakingrewards.com
から興味深いアンケート結果が発表されましたので、今回はそれを材料にステーキングビジネスの今後について考察してみたいと思います。
仮想通貨ステーキングの概観
今年は仮想通貨ステーキング元年といってはいいのではないでしょうか!
2019年7月25日時点で、ステーキングのためにロックされている仮想通貨の総額はYTDで8.76倍にまで上昇しています。
ステーキングされている仮想通貨の内訳は以下のようになっています。EOS、Dashといった時価総額が高めのものもありますが、今年になってからステーキングができるようになったCosmos、Algorandといったものの存在感が目立ちます。
続いてステーキングされている金額と報酬利回りを比較してみます。バブルの大きさはLockされている金額。~bは各コインの時価総額(1b=1 billion USD)、報酬%は年利です。
下線ありは2019年にステーキングがスタートした仮想通貨です。直近始まったものは報酬が高い傾向があります。高報酬なプロジェクトほど大きなステーキング金額となっており、投資家はやはり高利回りを好む傾向が見て取れます。ちなみにAlgorandは報酬はタイミングによってかなり変わりますので参考程度と思ってください。
アンケートの回答結果を見てみよう
ここからはstakingrewards.comのアンケート内容を見ていきます。
※これ以降出てくる画像はすべてhttps://blog.stakingrewards.com/staking-ecosystem-case-study/からの引用になります
質問1:自分でノード立てる派?カストディーサービス使う派?
ぎりぎり過半数の52.7%が「信頼できるカストディアンを使ったステーキングサービスを使う」と答えています。47.3%が「カストディアンを使いたくない=自分でノードを立てることを好む」と答えています。正直この結果は意外でした。現時点でステーキングに参加している人はテッキーな人が多く、自分でノード立てる派がもっと多いと思っていたので、個人的に興味深い結果だと感じました。
質問2:超絶楽なら自分でステーキングノード立てる?
70.0%は簡単なら「自らステーキングノードを立てる」と回答しています。質問1では過半数がカストディー使うと言っていたので、やはり手間が問題らしいです。
質問3:ユーザーはプロトコルガバナンスにどのように参加したいのか
33.2%が「直接的にガバナンスに投票したい」と回答しています。これに対して、44.4%が「場合による」、22.4%が「バリデーターが自分のかわりに投票することを好む」と回答しています。後者ふたつを合計した66%の人が「積極的な参加はしない」という回答結果で驚きました。
2/3が大概のことは上手いことやっといてくれ!という姿勢ですね。
確かに、提案一つ一つを自ら確認して、期限までに投票することはかなりの労力を要します。このあたりのコストを下げる工夫は必要だと思います。少し脱線しますが、66%が「積極的な参加はしない」という回答結果なのでオンチェーンガバナンスに立ちはだかる障壁は大きいと痛感しました。
質問4:ステーキングは不労所得だと考えていますか?
48%の人が「ステーキング報酬を配当と同じ不労所得として捉えている」と回答しています。つまるところブロックを承認して報酬を得ているという感覚が低いということでしょうか。(リスクを取っている感覚が低いのでペナルティ受けたら怒りそう)
ペナルティ・盗難などのリスクを意識している人は17.6%です。インフレ率との対比、ノードを立てることのリスク・面倒さを考えている人は12%程度でした。
Lock-upを嫌がっている人は7%と少ない結果です。
Lock-upを皆さん嫌がらないという結果が意外でした。このあたりは仮想通貨のホールド文化の現れなんでしょうか。
質問5:ステーキングプロバイダーを選ぶ際に重要視していること
Fee, Securityを重視しているが、ツール提供、過去レコード、コミュニティへの参加度合いも重要視されているという結果になりました。けっこう分散している印象です。
個人的に挙げられたものの中で意外だったのはNative Tool です。やはりまだまだ不便な中で、手間を省けるツールを提供してくれる会社・組織には高い評価が与えられるようです。また、Community Involvementも重要視されている結果となっています。
逆に、あまり重要視されていないものは以下のようになっています。
- Team Size
- #Protocols(プロバイダーがステーキングサービスを提供している通貨の数)
- 国籍
- 自己保有コイン残高
チームサイズ・国籍に対して評価が低いことが意外でした。逆にCommunity Involvementが高評価に挙がっているので、信頼のポイントは国籍・チームサイズ・#ProtocolsよりもCommunity Involvementなんでしょう。
やはりコミュニティーへの関与度合いによって信頼できるかを判断していると言えそうです。
アンケート結果から見えてくるユーザー像
高利回りを好み、ステーキングがリスクを伴う感覚が低く、ガバナンスに積極的に参加する意思はない。そして、手間を嫌うが、仮想通貨がLock-upされることは気にならない。
ステーキングが本格化したのは最近と言えますので、現段階でステーキングに参加している人は、仮想通貨ホルダーの中でも、コアな層と予想されます。しかし、思ったより俗物的で、面倒を嫌い、コミュニティガバナンスに積極的に参加する意思は薄いと言えそうです。今後参入するライトなユーザーはもっとこれらの傾向が強いと予想されます。
今後予想される展開
ユーザーのニーズを満たすべく、高利回り(=高インフレ)な仮想通貨が幅をきかせていく流れは続くと個人的に予想しています。開発チームからすると、初期から大量に仮想通貨を抱える立場の人が有利な設計ですので、願ったり叶ったり。。。かもしれない。
カストディーがバリデーターサービスを提供し、ユーザーの手間を軽減させる可能性もあると思います。これまで個人でカストディーを使うニーズはそこまで高くないように思われましたが、バリデーターサービスはカストディー業者にとって起爆剤となる可能性がありそうです。法定通貨における定期預金に似ているので、ユーザーにとっても分かりやすいです。
現在、リテール顧客の唯一の窓口と言える仮想通貨取引所にとっては、新しい競争領域となるでしょう。同じ仮想通貨を預けておくなら、当然報酬がもらえる取引所を選ぶユーザーが多いと予想されます。(PoloniexではCosmos ATOMを取引所に置いたままステーキング報酬の一部がもらえるサービスも始まりました。)
また、ホットウォレットサービスでも、取引所と同様に新しい競争領域になり得ると予想しています。なんでもかんでも一つのウォレットに入れておけばうまいことバリデートしてくれているというのが理想なんでしょうか。報酬狙いなら長期保有という考え方とホットウォレットはイメージが相反するので、ユーザーへのアピールが少し難しいかもしれません。
カストディー、仮想通貨取引所、ウォレットと並べてみましたが、やはり現在多数のユーザーを抱えている取引所が一歩リードしていると言えそうです。IEOなども含めて、仮想通貨業界は取引所を中心に進んでいくのでしょうか。この点に関しては、筆者として今後の課題と感じている側面もあるため、次回書かせていただきたいと思っています。
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引用元: CoinPost
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