イーサリアム(ETH)とビットコイン(BTC)、DeFi開発における特徴を比較|LongHashコラム前編
”DeFi(分散型金融)”とは、現在様々なサービスが展開されており、今後成長を遂げる分野として期待が集まっています。
今回の記事では、その分散型金融のプラットフォームとしてのビットコインに着目して、解説をしていきたいと思います。
分散型金融「DeFi」とは
イーサリアム(Ethereum)のエバンジェリストらが注目している、分散型金融「DeFi」をお聞きになったことはありますか?
DeFiの背後にある基本的な考え方は、「従来の金融サービスのほぼ全てを、何らかの分散型ネットワークまたはアプリケーションに置き換える」というものです。
例えば、「Uniswap」のような分散型の取引所では、信頼できる第三者機関を必要とせずに、ユーザーはイーサリアムネットワーク上で発行されたさまざまなトークンを交換出来ます。
また、DeFiの異なる例が、「Maker DAO」です。これは、ユーザーは、自分のイーサリアム(ETH)の保有に裏付けされたUSDステーブルコインを作成することができ、これもまた第三者に信頼を置くことを必要としません。
一方で、今となっては仮想通貨業界の多くの流行語の1つとなった「DeFi」は、実際に分散化されていないプロジェクトにでも関連付けられるようになっています。
また、従来イーサリアムの固有の現象として、大部分は宣伝されてきた「DeFi」ですが、実際にはビットコインでも「DeFi」を実現できるのです。
分散型プラットフォームとしてのビットコイン
まず第一に、そもそもビットコイン(BTC)は、「DeFi」の一種となります。
ビットコインは、分散型的なアプローチで、安全に従来の金融サービスの価値の保存と移動をすることを可能にします。
実際に、ビットコインネットワークは、史上初の分散型アプリケーションであろうと言われており、現在も開発者はビットコインネットワークの上に、新たな分散型アプリケーションを構築しています。
ビットコイン上に構築された分散型アプリ「Abra」
「Abra」の長期的な目標は、事実上グローバルで、許可や管理の仕組みが全く必要のない銀行になることです。
これはビットコインのスマートコントラクトのシステム、つまりマルチシグに基づいて構築されています。Abraがどのように機能するのかについての詳しい説明は、こちらです。
Abraの「許可が不必要な分散型」という属性が、ユーザーにApple株やETFなどの様々な種類の投資にアクセスすることを、初めて可能にしました。
Abraによって行われた最近の調査によると、ユーザーの43%が金融市場、特に米国株式へのアクセス状況が、現在のアプリにとっての最大の課題であると主張しました。
その最近の調査が以下となります。
2/ 43% of users said #Bitcoin has made investing in financial markets more accessible. 35% said they can now afford to invest in popular stocks, thanks to fractional investing. #defi #financialinclusion #cryptocurrency #blockchain pic.twitter.com/xxxurHqmfE
— Abra (@AbraGlobal) June 25, 2019
さらに、回答者の35%が、ユーザーが端数の株式を購入できるため、その手頃な価格設定がAbraの主な特長であると回答しました。
ビットコインによる「DeFi」の他の事例
- Lightning Network
- Blockstreamの”Liquid sidechain”
- 分散型取引所”Bisq”
「DeFi」におけるビットコインの制限
ビットコイン上に分散型アプリケーションを構築することは、イーサリアム上に構築することと比較した場合、いくつかの欠点があります。
ビットコインのスクリプト言語は、セキュリティと安定性の理由から初期の頃は特に制限されていました。それゆえ、開発者はイーサリアムのSolidity言語のように想像力豊かに表現することができません。
こちらはセキュリティと安定性の理由の参考記事です。
言い換えれば、開発者がイーサリアムでできることの全てを、ビットコインで再現することは不可能です。
理論的に、イーサリアム開発者のDeFiアプリケーションは、ビットコイン上に構築されたアプリケーションよりも更に信頼への依存度が低く、大規模な分散化を可能にすることができると言われています。
この点を解説するために、先述の「Abra」と「Maker DAO」の話に戻しましょう。
実はビットコイン上のAbraと、イーサリアム上のMaker DAOは、ユーザーに同様のサービスを提供しています。それは、BTCやETHをより安定した通貨、例えば米ドルでヘッジする能力です。
しかし、これら2つの分散型アプリは、全く異なる手段でこの最終目標を達成しています。
ビットコイン上のAbraでは、単純な2-of-3のマルチシグアドレスを使用して、ユーザーがアカウントに保持しているビットコインに対する米ドルの価格を、ユーザーとAbraの間で効果的に賭けを行います。
例えば、ユーザーが米ドルをロングすれば、Abraはビットコインをロングします。
ユーザーが、自分のAbraアカウントから米ドルを引き出すと決めた時、または単純にビットコインへ交換したい時などには、必ず第三者(オラクル)が、Abraアカウントに送るべきビットコインの量と、ユーザに送るべきビットコインの量を決めます(賭け期間中の価格変動に基づいて)。
その結果、ユーザーのビットコインは、ユーザーが自由に送信できるという条件の下で、実質米ドルに価値が固定されます。
ビットコイン上でDeFi開発を行う利点
ビットコインを中心とするネットワークは、ビットコイン上でDeFiアプリがローンチされた時に、利用する潜在的なユーザーが多く存在する可能性を示唆しています。その上、ビットコインは一般的に現存する最も安全で、信頼性の高い仮想通貨ネットワークと考えられています。
さらに、開発者やユーザーからのビットコイン尊敬のレベルに加えて、ビットコイン資産は仮想通貨分野で最も信頼されているお金の形であると言えるでしょう。
確かに、ボラディリティの問題は残るものの、ビットコインは弱気市場を何度も乗り越え、時間の経過とともに変動が少なくなっています。
こちらが変動に関する参考記事です。
確かにビットコインのスクリプト言語は、開発者が基のネットワーク上に構築できるものを制限しているが、ビットコインにはスマートコントラクトがないという考えは、間違いです。
こちらが間違いを解説している記事です。
https://coinjournal.net/debunking-the-bitcoin-cannot-do-smart-contracts-myth/
単にブロックチェーン技術のこの部分に対して、ビットコインコミュニティは異なる手段を取っているだけです。
スマートコントラクト哲学におけるこの違いについて、”Casa” CTOのJameson Lopp氏が今年初めのEpicenterのエピソードで解説しています。
Jameson Lopp氏の解説によると以下のように述べています。
かなり保守的なビットコイン開発者の多くは、ネットワーク上の全員が実行しなければならないスマートコントラクトを好まない。彼らはむしろ、同様のロジックを実行したいが、ただし実行はプライベートに行われ、その後世界中の人が検証できる証明を提供する、という形で再現させたいと考えている。
別の言い方をすれば、この保守派の考え方は、ネットワーク上のユーザー間で論争があったときに、ビットコインブロックチェーンはスマートコントラクトのトラストアンカー、またはスマートコントラクトの裁判所として機能するべきというものです。
どうしても必要なときにだけブロックチェーンを呼び出すことで、必要以上の情報が常に公共のデータベースに保存されなくなるため、ビットコインユーザーはスマートコントラクトを使って、より高いレベルのプライバシーとスケーラビリティを得ることができるはずです。
イーサリアム(ETH)とビットコイン(BTC)、”DeFi(分散型金融)”開発における特徴を比較|Longhashコラム後編
次回記事では、イーサリアムベースの「DeFi(分散型金融)」アプリ開発の複雑性とビットコイン上での開発の可能性について解説をしていきます。
引用元: CoinPost
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