お金も時間と共に価値を失えば、世界は良くなる(後編)|Freewillコラム
前半記事では、お金の仕組みが地球における諸課題の原因であることを説明しました。
- 前回の記事紹介
- なぜ今のお金の仕組みが問題であるのか、過去の事例なども参考にしながら独自の視点から解説しています。
では、時間と共に価値が減っていくお金の仕組みは人の意識をどのような方向に向けるのでしょうか。そして、その答えをふまえて僕が何を実現しようとしているのかを、この記事ではお話していきます。
お金を変えれば、より良い世界へ変われる
前半の記事、「価値を失っていくお金が繁栄のカギ」で紹介した例で証明されているのは、お金が時間と共に価値を失うならば、人はお金を、より長期的に価値が維持されるようなものに変えるという事です。
それは、林業や農業、教育、再生可能エネルギーなどでしょうか。時間と共に価値を失うお金の仕組みは、環境にも良い、長期的に価値があるものへと人の意識を向けます。
反対に、価値を失わないお金の仕組みは、環境にとっても人にとっても残酷です。より短期的に利益をあげるものへと、人の意識を向けます。
非良心的な行動が褒美を受け、良心的に仕事をすると経済的に破滅するのが今の経済です。
これは意識というよりは、強制と言ってもいいかも知れません。今のお金の仕組みは、無限に増えていく借金の利子とともに、人に成長を強制します。
5%の利子でお金を借りるのであれば、生きていくのに必要なお金と、少なくとも5%の利子を払えるお金を稼ぐ必要性に追われることになります。
複利というのは本当に恐ろしく、100万円を5%の複利で100年間借りると、1億3,000万円を超えるそうです。
人は働きすぎで死ぬまでなりました。今のお金の仕組み無しには、貧しい国の富を、富める国に、侵略する事なしに移動する暴力も成り立たないでしょう。
絶滅する動物も、今後さらに増えていくと言われています。森も死に、海では磯焼けと言われる砂漠化が起きています。
今のお金の仕組みでは、林業は割に合わないからです。木を切って売り払ったお金で、別の短期的な利益をあげるものにお金を変えたほうが有利だからです。
ロシアにはバイカル湖という湖があり、この湖の周りに住む人は毎日必要な分だけの魚を採り、自宅や近所の人たちと分け合い、良い生活を送っていました。まだお金が導入されていない頃の話です。
お金が導入された後、この湖の魚は最後の一匹まで採りつくされたそうです。
ピラミッドの頂点に君臨する「お金」
人には安全欲求というものがあり、これは生理的欲求の次に強い欲求だと言われています。できるだけ長期的に価値があるもので豊かさを維持しようとするのは、人である以上当然のことではないでしょうか。
長期的に価値があるものというのは、基本的に環境にとっても人にとっても良いものです。また、お金と違い実体があるものは、1人の人が莫大な量を独り占めすることもできないですし、その意味もないでしょう。
ですが、実体がないはずのお金が、価値を失わない仕組みの下では、この「長期的に価値があるもの」のピラミッドの頂点にお金が君臨する為、その他のあらゆるものを犠牲にしてでも、人はお金を手に入れることで豊かさを維持しようとします。
この仕組みの下では、お金はまさに神のようなものです。
今のお金の仕組みは破綻寸前?
どうでしょうか。お金が時間と共に価値を失う仕組みが、より良い世の中の創造につながるということが、まだぶっとんだ話に聞こえるでしょうか。
むしろ、お金だけがその価値を失わず、無限に増やせるということの方が、とても不自然な話ではないでしょうか。非現実性というのは、現状との差ではなく、持続性や合理性、人の幸福に従って判断されるべきだと思います。
お金が無限に増やせるようになったのは本当にごく最近のことです。
お金が有限な資源である純金と交換することができる、という話を聞いたことがあるかと思います。これができなくなったのは1971年のことです。
そう考えると、とても長くこうだったかのように感じる今のお金の仕組みは、まだ50年も続いていないもので、実験段階と言っても過言ではないでしょう。また、実験段階で既に破綻しているようにも思えます。
最近「資本主義は限界だ」という話をよく耳にしますが、実際この仕組みは上手くいっていたと思います。これは、この仕組みが自然界の仕組みにとても近いからだと僕は考えています。
環境がその時々で最も適した種を選び、残していくという仕組みです。これが限界を迎えているのは、不自然なものが1つ入っているからでしょう。はい、お金です。
希望があるのは、お金は人の手によって変えることができます。
生態系の破壊、資源の枯渇といった事態や、異常気象などの自然の猛威が人の手に負えないことは東日本大震災の例を見ても明らかですが、お金はもともと人が創り出したものだからです。
ドイツでの新たな試み
僕がドイツに設立しているのは、「Valueism」(価値主義)という会社です。「本当に大切なものに価値の軸を戻す」を理念としています。
ブロックチェーン技術をはじめとするIT関連事業に加え、環境に良いビジネスモデル(プラスチックフリーのスーパーマーケット等)や製品の輸出入などを行う予定ですが、一番の目的はブロックチェーン技術を利用して、時間と共に価値を失うお金を発行することです。
この仕組みは地産地消を促進し、その地域のライフスタイルや特性に合った発展を見込める上に、税収が増えるのですから、今の社会課題に関する関心の高まりや、お金に疑問を抱く人が増えている背景も追い風になり、多くの賛同を得られます。
意識の変化とテクノロジーがもたらす希望
前に書いた通り、時間と共に価値が減るお金は、地域単位ではとてもうまくいっていたものの、その時の国家などの、いわゆる中央集権によって廃止されてきました。
また同じことが起こるのでしょうか。僕は希望を持っています。今はどんどん非中央集権化が進んでいるからです。
SNSの普及も大きいと思います。このことが話題になれば、たとえ一度は廃止されようが、同じような運動がますます世界各地で拡がるでしょう。
少なくとも今のお金の仕組みに疑問を持つ人は増えるはずです。そのように、「人の意識」が変わることが何よりも大切です。
また、ブロックチェーン技術は非中央集権化ととても相性が良く、過去になされた時よりも、より効率的・効果的に時間と共に価値を失うお金を導入できるでしょう。お金の流れもすべて記録されるので、税収の使い道などもとても透明になると思います。
Freewillの事業展開
現在もCOOを務めているFreewillの会社名である「Freewill」は、日本語で「自由意志」で、この会社で育った人財が、自らの自由意志を実現させていく、という理念のもとに創られた組織です。
そして、創業者である今のCEOにはとても感謝しています。今書いていることが、僕の実現したいことになります。
Freewillでもブロックチェーン技術を利用したシステム開発の受託や、いわいる発展途上国等の恵まれない環境で育った才能に課金し、世界中の皆で育てていく「SPIN」という自社サービスも開発しており、そこでもブロックチェーンによってお金の流れを透明にするということをしています。
限界が近づく地球
地球の46億年の歴史を46年に置き換えて考えると、人類が誕生したのはたったの4時間前で、1分前(100年~200年前に相当)から今までの間に、地球上の森の半分以上を破壊してしまったそうです。持続可能な訳がありません。
この間に、地球の気温も1℃近く上昇し、日本を含めた世界各地での天災による被害は、年々拡大しています。これはもはや人災と呼んでも良いかも知れません。気候変動は、人類、またこの惑星が歴史上直面した問題の中でも、最も深刻で、取り返しのつかないものだと僕は考えています。
迫られる変革
僕たちがこの問題の影響を受ける最初の世代で、食い止めることのできる最後の世代かも知れないのです。自分たちの子どもや、孫の世代に、どういう世の中を継いでいくのか。
グレタ・トゥーンベリさんというスウェーデンの15歳の女の子が始めた、気候変動をくい止めることを呼びかける学校ストライキは、今や世界100ヵ国以上の学生の間で拡がっていて、気候非常事態宣言を出す国も日に日に増えています。
一見無関係に見えるお金の仕組みが、この問題の根本原因の最たるものであり、それを変えることで、この問題の解決に大きく貢献できるとしたら、ワクワクしませんか?
否応なしに訪れる、望ましくない変化を前に、僕たちは変革を迫られている時ではないでしょうか。
お金の仕組みへの問いは、人類がこの惑星の上で今後も生存できるかどうかを決める、決定的な問いだと思っています。
引用元: CoinPost
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