2018年末の暴落要因から見る仮想通貨市場のシグナル ビットコインマイニングに復活の兆し
- 仮想通貨市況
- 18年末の下落要因となったビットコインマイニングの状況が、過去最高水準付近まで復活。市場への影響と今後の市場の注目ポイントを考察した。
仮想通貨市況
仮想通貨市場6月3日、ビットコインが91万円から94万円のレンジで推移を継続しているほか、ビットコインの一時的な頭打ちを見て時価総額を上昇させたアルト市場も沈静化するなど、直近1ヶ月と比較して落ち着いた週末相場となった。
市場の注目はもっぱら心理的節目である現物BTC=100万円にあるが、大幅調整局面はいつ来てもおかしくない状況も予想以上の底堅さに、先行きが読みづらい状況が続いている。
今後の市場における重要ファンダメンタルズ要因は主に2つ、規制面から見るG20とビットコインハッシュレートの過去最高値到来である。
日本は初の議長国を務める2019年のG20サミットの中で、仮想通貨の内容が共同声明に盛り込まれているのは6月8日から9日にかけて福岡県で開催される財務大臣・中央銀行総裁会議。世界的に仮想通貨交換業者の登録制や免許制の導入するほか、アンチマネーロンダリング(AML)やテロ資金供与対策(CFT)を定める新規制に合意される予定だ。
共同通信社は6月1日に、仮想通貨に係るAMLやCFTで追加対策を2021年までに立案するよう関係当局へ要請する方針を固めたと報道。ついに世界規模の共通規制の制度化が予定される。
なお、前情報としての規制方針の方向性は示されているため、G20当日の内容はある程度市場に織り込まれていると見ることができるが、規制関連の内容(特に世界的な規制方針は初)は短期的な値動きに影響が出やすいほか、企業進出を促進するなど長期的な市場の方向性に作用する可能性もあるため、この2日間の報道には注視したい。
注目すべき内容はハッシュレートの最高値到達
なお、現在もっとも注目すべき内容は、ビットコインマイニングハッシュレートの推移だ。
ビットコインのマイニングに関しは、先日の調整タイミングで採掘難易度(マイニング・ディフィカルティ)が過去最高を記録。ハッシュレートも価格に相関して続伸しており、2018年8月に記録した過去最高値に近づく勢いだ。
採掘難易度とは
ブロック生成の難易度の度合いを表す。ビットコインはブロックが10分に一回生成されるように設計されており、マイナーの競争激化により生成速度が速まれば、難易度が上昇するように調整が行われる。
#BTC difficulty is an at all time high. Miners’ margins have increased with the BTC price and it looks like they’re reinvesting those increased margins in more hardware. pic.twitter.com/f9Zi5qf1Ka
— CoinMetrics.io (@coinmetrics) May 31, 2019
ハッシュレートの推移が重要視されるのは、ビットコイン市場におけるデータから見えるファンダメンタルズ要因であるほかに、市場大暴落「2018年末の下落相場」の主要因になった点であるためだ。
当時ビットコイン価格の急落と共に大きくハッシュレートが続落、マイナービジネスの終焉が危ぶまれたと共にハッシュレートと価格が相互に作用する市場の急落が確認された。マイナーは相場変動に対して下値リスクをヘッジする手段を講じているとされるが、マイニング通貨を都度売るわけではなく、ある一定期間の保有が必要になってくる(機械代や工場の先行投資も含め)。そのため、通貨価格の将来性(価格の方向性)をどのように見ているか、単純な現在の収益性以上の意味を含むことになる。
現在のマイニングハッシュレート比率をみると、直近のハッシュレート値で勢力を再び伸ばしているのが、Bitmain傘下のBTC.comとANT Poolである。これまで小規模マイナーを含むUNknownが勢力を伸ばしてきていたが、直近2週間の推移でBitmainの比率が再び高まっている。仮想通貨市場全体の上昇の中で勢力を伸ばしてきたBitmain系のマイニングプールが再び強気を示している。
特に顕著なハッシュレートの推移の変化で言えば、上述しただけで見れば、小規模マイナーを含む「UNknown」が再び勢力を後退させている。逆に言えば、大規模マイナーが再びマイニング事業へ大きく出戻りしている状況を示すデータとなり、中長期の相場にも楽観視している様子が伺える。
デフィカルティ上昇の背景
なお、デフィカルティと共にハッシュレートが上昇している背景には、価格の上昇の他に、マイニングが盛んな地域にあたる中国の一部の地域で豊水期に突入したためである。
豊水期は、中国の雨季に伴い水力発電の電力量が多く変動し、電力代に大きな差が生じる時期で、水力発電が活発な地域(四川省や雲南省など)で拠点を構えるBTCマイナーのランニングコストが大幅に低減する時期を指す。期間と共に時間による価格変化も行われるため、下に簡単な簡易データを掲載する。
①豊水期:6月〜10月、枯水期:1月〜4月、12月、平水期:5月、11月
②峰時:7:00〜11:00 & 19:00〜23:00、谷時:23:00〜翌日7:00、平時:11:00〜19:00
豊水期では常時5%、最大で50%の安価な電力価格供給を可能とするが、日夜問わずに稼働が行えるマイニングにおいて、その恩恵を全面に受けることができる。よって大手マイナーの勢力が伸びてきた背景には、このような状況があるのは間違いない。
価格への影響
実際に気になるのは、マイニングハッシュレートによる相場への影響だ。
分析を行う前に簡単な比較を行うために、デフィカルティがほぼ同水準である時期の価格と現在の価格で比較する。(マシン性能などは同水準と仮定)
日付 | 現物BTC価格 | デフィカルティ | ハッシュレート |
---|---|---|---|
2018年10月4日 | 75万円 | 7,454,968,648,263 | 53,364.74 PH/s |
2019年6月3日 | 92万円 | 7,459,680,720,542 | 52,796.53 PH/s |
現在のデフィカルティと同水準に当たる18年10月と比較すると、ハッシュレート値もほぼ同水準ではあるものの、ビットコイン価格自体は20%近い乖離が生まれている。単純な計算では、過去最高値付近まで上昇しているハッシュレートも、上述したコスト低下の状況も踏まえると上昇余地は見込める状況である。
(ただ、上記の10月付近が過去最高のハッシュレート水準であったことを踏まえると、過剰にマイニングビジネスが進んでいた状況であることも考えられるため、収益率を加味しないマイニングが行われていた可能性も否定できない。)
となると、概ね2018年の急落前水準までマイニングの状況が戻ってきた中で、18年末以降問題視されていたマイナーの新規発行通貨の売却に一定の歯止めがかかる可能性が見えてきた。
なお、価格推移にも左右されるハッシュレートの上昇ではあるが、過去最高水準まで到達した時点より、アルトコインへの資金流入が起きる可能性も考えられる。というのも、ビットコインハッシュレート(またはデフィカルティ)の水準が最高水準到達時まで急進してきた中で、価格と共に頭打ちが起きた場合、マイナーのハッシュがアルトコイン通貨へと流れる可能性が高いためだ。
特に2018年の下落と共に大きくハッシュレートが下落したアルトコインは、ブロックチェーンセキュリティ面での欠如が危ぶまれていた通貨であり、マイナーの撤退の影響を大きく受けていた。(特にモナコインブロックチェーンへの攻撃以降)よって状況緩和による通貨価格への影響も大きいと考えることができる。
なお、2018年末の下落前にも、マイニングハッシュレートの急落が市場の先行指標となっていた。今後の市場を見ていく上でも、ハッシュレート推移の重要性を追いながらトレードに生かしていくことは、仮想通貨特有のファンダメンタルズとして重要となるだろう。
引用元: CoinPost
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