仮想通貨マイナーの利権争い激化 イーサリアムの「非中央集権化」巡り
- Bitmain共同創設者「ASICは非中央集権化に貢献する」
- 仮想通貨マイニングに特化したASICが、本来分散型であるはずの仮想通貨ネットワークを中央集権化する要因であるとの批判に対し、Bitmainの共同創設者Jihan Wu氏は「一部のGPUマイナーが利権を主張するための言い訳に過ぎない」と反論。
Jihan Wu氏、「ASICは非中央集権化に貢献する」
仮想通貨採掘(マイニング)に特化した集積回路(ICチップ)ASICが、本来分散型であるはずの仮想通貨に不平等性をもたらす要因となっているとの議論に対し、マイニング製造最大手の「Bitmain」の共同創設者Jihan Wu氏(ジハン・ウ)は「ASICマイナーはイーサリアムのブロックチェーンネットワークをより分権化する」と反論した。
同氏は、イーサリアムが公平性の実現を目指し実装準備中のASIC耐性アルゴリズム「ProgPoW」に対し、「逆に中央集権化を促進し、他の集積回路設計者をETH採掘から排除するための手段だ」と主張し、一部のGPUマイナーが利権を主張するためのアルゴリズムに過ぎないと批判を繰り広げた。
仮想通貨の非中央集権化を巡り、マイナー間同士の利権争いが始まったとの見方が強まっている。
「ProgPoW」採用の影響は年間6億5500万ドルか
3月27日に中国重慶で開催されたブロックチェーンイベントに参加したWu氏は、「(ASICのように)特定のアルゴリズムを処理するために設計された強力なプロセッサーは、採掘作業で一般的に利用されているグラフィックス処理ユニット(GPU)よりも中央集権化しにくい」と主張した。
議論はイーサリアムが実装を計画中のASIC耐性アルゴリズム「ProgPoW」にも及んだ。
イーサリアムはProgPoW実装の目的を、「ASICの効率を下げGPUの性能を最大限に引き出し、イーサリアムの理念である非中央集権ネットワークを構築すること」としている。今月25日に、実装に向けた技術監査を行う第三機関を決定したことを、イーサリアムコミュニティ主導のプロジェクト管理団体「Ethereum Cat Herders」の公式ブログ
で発表した。
ZCashの監査を担当したセキュリティコンサルタント企業Least Authority社が、ProgPoWによるイーサリアムのセキュリティーやエコシステムへの影響などを監査する。
なお、将来的に実装された場合、イーサリアムの採掘報酬市場に年間6億5500万ドル(約726億円)の影響を与え得ると予想されている。
「ETHの中央集権化」を指摘
Wu氏はこうしたイーサリアムの対策に、冷静かつ辛辣なコメントを発したことで、ProgPoWを巡り、マイナー間の「鼬ごっこ」を示唆した。
ProgPoWなど、ASICに耐性を持つことを目的とした様々なネットワークのアップグレードをみてきたが、対策するASICマイナーは今後も存在し続けるだろう。
Wu氏は、「SparkpoolとEthermineという2つの主要なETHマイニングプールがネットワークの処理能力の半分を制御している。」という統計を示し、「ETHネットワークはすでにある程度中央集権化している」と指摘した。
ProgPow実装の目的は明らかに集中化を達成するためであり、他の集積回路設計者をETH採掘から締めだそうという試みだ。特許によって強力に保護されているGPUのようなハードウェア対策として、オーダーメイドのアルゴリズムを採用することは競争の激しい市場を避けるための手段である。
さらには同氏は、「ProgPoWの提案に関与した特定の人物が、GPUハードウェアの大手メーカーNVIDIAの最高経営責任者(CEO)に直接報告している」との報道も引き合いに出したものの、その発言の信憑性をバックアップするための証拠は提示しなかった。
「GPUは51%攻撃を増加させる」と主張
また同氏は現在イーサリアムで使用されているPoWからPoS(proof-of-stake)へ移行に関しても、否定的な見解を示した。中央集権化の問題が解決されるどころか、「完全に移行した場合、ネットワーク全体がさらに集中化されることはほぼ間違いない」と指摘。
もう一点興味深い発言は、「ASICマイナーはGPUハードウェアよりもブロックチェーンネットワークを安全にする能力がある」というもの。ASICは特定の暗号化ネットワークに特化しているため、「ネットワークに対して51%攻撃を仕掛けようとしている悪意のある行為者にとってはコストがかさむ」という、Wu氏の根拠である。
対照的に互換性のあるGPUベースのマイニングアルゴリズムでは、例えば共同で採掘を行うマイニングプールを利用することにより、低コストで51%攻撃を仕掛けることが可能だとしている。
今年1月に51%攻撃により100万ドル(約1.1億円)の被害を出したETC(イーサリアム・クラシック)の事件が記憶に新しいが、同様の手口の攻撃が増加すると一部の専門家は警鐘を鳴らしている。
Bitmain、新経営体制や再稼働などポジティブな動き
Wu氏の数々の挑戦的な発言はBitmainが昨年4月にイーサリアム向けASICマイナー「Antminer E3」を発表した事実と照らし合わせると、多少なりとも威嚇の意図が感じられなくもない。
以前のBitmainの発表によると同社はマイニング機器市場シェアの70%を独占しているものの、仮想通貨急落の煽りを受け、マイニング事業縮小や人員削減、香港でのIPO断念など、苦戦が続いていた。
しかし先日、経営体制を一新する方針を打ち出したほか、4月以降に数十万台規模の再稼働を予定しているなど、ポジティブな材料もそろっている。
引用元: CoinPost
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