ビットコイン相場の下落トレンドを好機と見る 大手ファンドなどが目論む仮想通貨戦略
- 仮想通貨市場の発展に重要なトレンドまとめ
- 仮想通貨市場は昨年から下落トレンドが続いているが、その中でも機関投資家の参入や関連サービスを拡大する動きが着実に進み、大手機関の動向も明らかになりつつある。投資ファンドの現状から、ファンド関係者がみる戦略、また機関投資家関連の最新動向を追った。
仮想通貨市場の注目動向まとめ
仮想通貨市場は2018年の1月から苦しい相場が続いており、現在も史上最長の弱気相場が継続した420日に近づきつつある。仮想通貨特有のボラティリティもビットコインではあまり見られなくなっており、BTC価格は3500ドル台を推移している。
しかしそのような相場とは裏腹に、仮想通貨市場の長期的な発展に向けて多くの企業が動きを進めており、本記事では以下の5点の最新状況をまとめて、紹介する。
仮想通貨投資ファンド
ブルームバーグによると、仮想通貨ヘッジファンド指標の「Eurekahedge Crypto-Currency Hedge Fund Index」が、2018年の仮想通貨ヘッジファンド収益率を公開した。同指標によると、仮想通貨市場全体のヘッジファンド収益は、平均で70%の損失を形状は計上したという。
仮想通貨市場の下落相場が主な要因となり、42の仮想通貨ファンドが事業を閉鎖したが、世界中ではまだ740以上のファンドが運営を継続していると仮想通貨コンサル企業のCrypto Fund Researchは統計も発表している。
しかしこのような下落相場である「今」をチャンスと捉えるファンド経営者や投資家は少ないようだ。
米西海岸に拠点を置く投資ファンドArcaのポートフォリオマネージャーのJeff Dorman氏は以下のように言及している。
今後、動揺買いや「物言う投資家」が増える機会があるだろう。
実際の抵当価格以下で(仮想通貨)企業を買収することも可能だろう。
多くの投資家は現時点で悲観的になっており、市場撤退を視野に入れているため、ICOトークンだけではなく、企業の買収もファンド側としては破格の価格で購入が可能とみているようだ。
このような傾向は昨年、仮想通貨ベンチャーファンド企業の数がヘッジファンド企業を初めて上回った点からも見られている。
また多くのヘッジファンドは、投資資産が2年以上ロックアップ(資産が動かせない期間)されるケースもある。最長ではPolychain Capital社が7年の資産ロックアップを採用しているなど、長期目線での投資傾向があることが報告された。。
ヘッジファンドの最新傾向
米キャピタルファンド企業MulticoinのマネジメントパートナーのKyle Samani氏によると、新たな傾向が現れているそうだ。
傾向として挙げられたのは、多くの仮想通貨ファンドがベンチャーファンドに切り替えている点、またロックアップ期間によるファンド運用資産残高の流動性は下がっている点、最後に多くのファンドはSAFT契約に注視している傾向だ。
SAFTとは
(Simple Agreements for Future Tokens)の略で、投資契約の一種。初期出資の代わりに将来的に通貨・トークンの交付が見込める。
SAFTは、通常の価格よりかなり低い価格で購入できるため、初期投資としての出資金はかかるものの、将来的な動きを見越した動きとして注目が集まっているようだ。ICOに仕組みに似ているが、適格投資家や機関投資家向けの商品となるため、規制に準拠した形で行われる。
またこのような流れに加え、下落相場の中でも機関投資家などが密かに仮想通貨市場に関心を示しているとキャピタルファンド企業MulticoinのマネジメントパートナーのKyle Samani氏は説明した。
多くの機関投資家と話を進めているが、多くの賢明な人たちは1年、2年と仮想通貨業界に興味を持ちながらも、市場が落ち着く(淘汰される)のを待ってから参入を望んでいる。
このように語っているSamani氏の見解は本当なのか
実際に機関投資家を対象とした仮想通貨サービスの提供を目指す大手企業の最新状況を以下にまとめた。
仮想通貨ローン、11億ドル分のBTC融資が公開
2018年2月に発足した仮想通貨レンディング事業Genesis Global Capital社が2018年、約11億ドル分(約1200億円)分の仮想通貨をローンとして融資していたことが明らかになった。
CEOであるMichael Moro氏はOTCショートも提供する同社の仮想通貨サービスを以下のように説明した。
ユーザーに対して、ビットコイン投資にショートとロング、両方の選択肢が与えられるべきだ。ロングだけの市場ではない。逆の立場もとり、価格が下がることを予想してショートするのも問題ではない。
3月に発足したGenesis社の仮想通貨ローンサービスは秋頃に5億ドルを突破した後、3ヶ月後の昨年12月14日に総融資額10億ドルのライン突破するほど需要があったという。
しかし、Moro氏によると、融資されたビットコインローンで実際にショートに利用された分は全体の11%に及ばない程度だといい、大半のローンはビットコインATM企業が現物を確保するために利用しているようだ。
また、ビットコインのアービトラージ(裁定取引)にも活用されているとMoro氏は明かした。
またビットコインキャッシュのハードフォークなどが要因となってビットコイン価格が1ヶ月で40%近く急落した11月を含む第3四半期だけで、500億ドルのビットコイン・ローンが融資された点は、ショート比率が低いといえども、仮想通貨ローンに対する需要の高まりを表していると言えるかもしれない。
機関投資家向けの仮想通貨サービス展開
カストディサービス
フィデリティ
昨年末に仮想通貨事業に参入すべく、新規子会社設立を発表していた大手金融機関であるフィデリティ社が3月中にカストディサービスの提供を部分的に開始する構想があることが関係者の話から判明した。
フィデリティ社の子会社、Fidelity Digital Assets社は機関投資家を対象にまずはビットコインの保管サービスを提供する予定で、今後仮想通貨イーサリアムにも対応を追加も計画している。
伝統的な大手金融機関のカストディサービス提供は、初の事例となるため、実現すれば仮想通貨業界にとっては機関投資家の呼び水になると期待感が高まっている。
ビットコイン先物取引
TD Ameritrade
大手ブローカー企業のTD Ameritrade社も、現在ビットコインの先物取引を提供している企業の一つだ。
最新の内容としては、ナスダックの企業紹介番組「TradeTalks」にも同社の関係者が出演、仮想通貨に関わる今後の戦略について触れた。
TD Ameritrade社のトレード戦略マネージャーのShawn Cruz氏は現在はビットコイン先物取引を提供しているだけだが、他の仮想通貨銘柄も「流動性と規制」を見極めながら提供する方針を示した。
流動性が重要である。また規制に準拠している取引所に上場している事も必要だ。
その2点があったからビットコイン先物取引提供に至った。
米国ネブラスカ州に拠点を置き、ナスダックにも上場しているTDアメリトレード社が今後さらなる仮想通貨デリバティブ商品を提供するのか注目が必要そうだ。
Bakkt
また仮想通貨市場において、最も注目を集めたのがBakktの現物決済のビットコイン先物取引商品だろう。
マイクロソフトやスターバックスなど大手企業が複数出資した点も注目を呼んだ要因の一つで、有識者のブライアン・ケリー氏は8月に発表されたBakktの発足が「2018年、仮想通貨市場にとって一番大きなニュース」などと発言するなど、世界的な注目を集めた。
ニューヨーク証券取引所の親会社であるICEが提供するBakktは機関投資家に向けて、現物決済のビットコイン先物取引商品を当初2018年12月に発表する方針であったが、11月に1月24日への延期が発表され、その後も米政府の「シャットダウン」の影響で現在まだ先物取引は提供されていない状況が続いている。
一部では4月に延期となった関係者筋の報道がされていたが、公式側から具体的な開始日は発表されていないのが現状である。
CMEとCboe
仮想通貨市場が白熱していた2017年12月、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)とシカゴ・オプション取引所(Cboe)は、米CFTCから認可を受けた形で相次いでビットコインの先物取引の提供を開始。
発表後、ビットコイン価格は3日足らずで+50%の高騰を記録する要因となった。以下はビットコイン先物が開始した直後の2017年12月のビットコインチャートである。
現在も、微小ながら、CMEとCboeの限月前後ではBTC価格に影響があるとされており、次の先物SQはCMEのもので、2月14日午前6時に予定されている。
Huobi
また大手仮想通貨取引所Huobiも現在ビットコインだけではなく、イーサリアム(ETH)、イオス(EOS)そしてライトコイン(LTC)の提供をしている。
さらに今週、関係者の話から将来的には仮想通貨XRPの先物商品取引提供も計画されていることが判明した。
そのほか、Huobiと競合する仮想通貨取引所OKExも限月の無い「永久先物取引」商品をビットコインやイーサリアムなどで提供している。
バイナンスはまだ先物取引は提供していないものの、OTC取引を開始する方針を開催されたばかりの「バイナンス・ブロックチェーン・ウィーク」で発表したばかりである。
新たな仮想通貨取引所ErisX
ErisXは2018年10月に発表された新たな仮想通貨取引所で、2019年中に仮想通貨の現物取引や現物決済の仮想通貨先物取引商品の提供を目指している。
また、現在ErisXは米商品先物取引委員会にデリバティブ清算機関としての申請認可を待っている状態にあり、実現すれば規制に準拠している点だけではなく、複数の大手企業が出資していることからBakktの競合取引所となる可能性がある。
ErisXは10月時点で以下の通貨を対象として商品を提供する方針を発表している。
- ビットコイン
- ビットコインキャッシュ
- イーサリアム
- ライトコイン
また同取引所に出資を表明している企業の一つであるTD Ameritrade社のトレード戦略マネージャー、Shawn Cruz氏は以下のように言及している。
我々はErisX取引所に出資している。投資することで、ユーザーに規制に基づく取引所へのアクセスを提供することができる。
また(ErisXを通じて)さらに現物や先物などのプロダクトが提供されるだろう。
昨年10月に発表された仮想通貨取引所「ErisX」は未だ開始していないが、多くの名門・大手企業が出資していることから注目を集めているほか、米CFTC(商品先物取引委員会)に申請を提出するなど、規制に基づいた取引所である点が機関投資家を呼び込むと期待視されている。
さらに仮想通貨市場から期待されているBakktの競合取引所となり得る点も注目である。
日本からもマネックスグループが出資している取引所に投資している21社の中でも特に有名な企業は以下の通りである。
- ビットメイン
- フィデリティ
- Cboe(シカゴオプション取引所)
- Consensys(コンセンシス)
- Nasdaq(ナスダック)
- TD Ameritrade
- マネックスグループ
総括
先週はSECに提出されていたVan Eck社のビットコインETF申請が取り下げられたが、ビットコイン相場への影響は少なく、織り込み済みだったと言う声もある。
確かに一見すれば仮想通貨の相場は相変わらず厳しいとみられても仕方ないが、米国の規制面でも、複数の州において仮想通貨関連の法案が提出、可決されるなど、確実に長期的な発展を遂げるための動きは続いていることは間違いない。これから仮想通貨を取り巻くメジャープレイヤーも変わり、状況は大きく変わることが予想されるが、企業やプロジェクトの発展、そして規制面での明確化が引き続き行われていけば仮想通貨市場のトレンドには引き続き注目したい。
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— CoinPost -仮想通貨情報サイト- (@coin_post) 2018年10月12日
引用元: CoinPost
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