暗号資産市場の価格-流通量に基づくHerfindahl-Hirschman指数等の諸分析(Dec 30, 2018版)
軟調な相場が続いた行く年に惜しみ無く、来る年に希望を馳せていらっしゃるであろう皆様、いかがお過ごしでしょうか。11月の相場急落以降、市場の時価総額和は1000億ドルを底に粘っています。粘っているとは言え、ご存じの通り投資家のみならずネットワークを支えるマイニング事業者にも相当辛い状況です。各国の主要メディアでもその困惑ぶりが報じられました。相場急落以降、暗号資産市場に構造変化が訪れたのか見ていきましょう。
12月下旬の暗号資産市況と寡占度(Herfindahl-Hirschman指数)
まず時価総額和とHerfindahl-Hirschman指数(HHI)を図1に示します。評価対象は時価総額$10k以上のトークンを含む暗号資産全体です。
図1:2016年6月1日以降の暗号資産市場全体の時価総額和(上段)とHHI(下段)*
11月中旬に発生した急落によって2000億ドルあった時価総額和は、一時その半分に相当する1000億ドル近い下げ幅を見せました。今は少し戻していますが、それでも1300億ドル弱に過ぎず、この急落の真因について納得のいく言説も未だ見られません。ただでさえ弱気になっていた相場に入った超長期的トレンド(図中上段の赤破線)を割る「一刺し」以降、連鎖的に生じたポジションクローズの大波を戻すほどの買い意欲は外部のマクロ環境もあってか市場参加者にほとんど無いようです。年明けにはBakktとETF承認の楽しみが控えており、暗号資産にとってその未来は決して暗くないはずですが難しい所ですね。
次に図1下段、HHIを見ましょう。引き続き3000近辺で推移し続けています。やはり3000ラインは一つの「壁」で、現在の市場参加者においてはこのラインが均衡点なのです。2017年にBTC一強体制が崩れ、アルトにも大量の資金が入り始めてから、昨年10月頃の高HHI期と2018年前半の低HHI期を除けばほぼ3000前後となっています。バブル期におけるメジャー通貨への集中、そしてバブル崩壊(?)によるマイナー通貨への分散を経て、市場は再びバブル前の集中度に戻っているのだと思います。バブルはそうそう訪れるものではないので、この均衡点が次に大きく動くのは、おそらく市場参加者が相当に増えるか、もしくは減る時でしょう。
図2は時価総額分布を示しています。縦軸は時価総額、横軸は通貨の順位を表しています。HHIに変化が無かったことからも察しが付くように、前回11月(緑線)に比べて今月(黒線)の分布にほとんど変化はありません。違いを見出すとすればテール部分、すなわち超低位通貨(草コインとも呼べないレベル)が増えている点でしょう。
図3:コイン・トークン別暗号資産時価総額分布(実線が今月、破線が先月の分布)
図3に示したコイン・トークン別の分布から、これが明らかにトークン系のロングテール化によるものであることが分かります。なぜこの期に及んでテールが伸びるのか分かりません。ここまで低い時価総額だと上場した側も「何処でも良いからとにかく上場した。出来高も価格も全然関係ないぜ」という世界だと思いますが、そんな世界でも良いという「不健全」な上場意図にはなんとなく察しが付きますね。ここ1年で延びたテールに戻る気配は無く、個人的には早期に短くなってもらう方が界隈の健全化に繋がると思います。
図4:単価と流通量の関係(当時時価総額$10k以上。赤点:今月、緑点:先月)
図4は単価と流通量の関係です。先月(緑)から今月(赤)にかけてこちらもほとんど変化がありません。均衡を保っているところです。
最後、図5で時価総額と流通量の関係について上位通貨の様子を見ます。BTCの独走態勢に変わりなく、先月に比べてETHがXRPに迫っていますね。BCHの次にはEOS、XLM、LTCと続きます(USDTは別)。順序に大きな変更はなく、相変わらず流通量の多寡は時価総額にあまり影響していません。年明けてこの順列に変化が訪れるのでしょうか。
今年最後の記事を軟調な相場報告で終えてしまうのは残念ですが、こればかりは仕方ありません。今年はリーガル面を含めた暗号資産周りの整備・認識が各国で飛躍的に進んだ一年でした。日本でも来年の法改正で暗号資産を取り巻く環境はまた大きく変わるでしょう。市場規模の変動はあれど市場集中度は落ち着いています。この均衡を維持した状態で今一度各資産のもつ真価とその未来を見直し、2019年は価格以外の面で広く世間の耳目を集める年になって欲しいと思います。
皆様、どうぞ良いお年をお迎え下さい。
引用元: ビットコインニュース
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