仮想通貨の所得はバレている?元国税局職員からみた『仮想通貨の税務調査の実態』|坂本新税理士インタビュー
- 『元国税局職員からみた仮想通貨の税務調査の実態』
- 仮想通貨の確定申告支援サービスを提供するAerial Partners社が、元国税局職員で仮想通貨の税務調査に特化した業務を提供する坂本新税理士にインタビューを実施。税務調査の実態が明らかに。
『元国税局職員からみた仮想通貨の税務調査の実態』
副業などを行なっていない会社員であれば「税務調査」は、他人事と考えている方もいるかと思いますが、仮想通貨で所得がある場合は別の話です。
今回は、仮想通貨の確定申告支援サービスを提供する株式会社Aerial Partnersが、元国税局職員で現在は仮想通貨の税務調査に特化した業務を提供されている坂本新税理士(たまらん坂税理士事務所)にインタビューを行いました。
まずは、坂本税理士が国税局職員から仮想通貨に特化した税理士になった理由をお聞かせください
私は、一言でいえばオールラウンドに国税局の中の仕事をしていました。平成4年に国税局に入って、都内の税務署での勤務や、東京国税局では徴収部・総務部・査察部に勤務していました。
その後、国側が被告となって訴訟が起こる「租税裁判」の国側の代理人ということで法務省へ出向して、裁判手続き等もしておりました。法務省への出向の後は東京国税局に戻り、今度は国が原告となり、訴状を作成するといった仕事をして、最後は東京国税局管内のすべての税務署に行って審理ができるような広域担当職員をしていました。
私が税務署等で働いていた時から、ブロックチェーン/仮想通貨の技術が会計業務を大改革できると思っていました。
正直な話、当時は仮想通貨の話をすると、周りからは、そんなものは流通しないと馬鹿にされていました。しかし、この金融の大革命を見たい、肌で感じたいと思い、仮想通貨の利便性に魅了されてきました。
その一方で、税務の面では、多くの問題点を感じていたので、税理士としてフォローできるように、あるいはきちんとした税制にもっていければと思い、仮想通貨の税務調査に特化した税理士になることを決意しました。現在では実際に、仮想通貨の税務調査への立会いを行っています。
仮想通貨の税務調査とは実際にどのようなものなのでしょうか
まず、税務調査とはどのようなものかを簡単に説明します。
税務調査は、確定申告が必要な人、している人を対象に、申告漏れなどがないかを税務署が調査して、漏れがある場合には修正申告をしてもらうということを目的としています。
実際の税務調査の流れとしては、まず、ある日突然税務署から「連絡依頼票」という調査通告が届きます。そして基本的には、納税者の自宅に調査官が直接来ます。これは自宅に有益な資料があるためです。調査官には質問検査権がありますので、任意で自宅のパソコンの中や書類を調査することになります。
基本は任意なのですが、任意の調査に応じなかった場合は、査察部等による強制調査が入る場合もありますので、協力するのが賢明です。
調査が入って申告漏れが指摘された場合は、状況に応じて多額のペナルティである加算税が発生します。これに加えて、延滞税も発生します。また、意図的に申告をしなかったことがわかった場合は脱税という扱いとなり、懲役が課される場合もあります(所得税法第238条、法人税法第159条)。
実際の税務調査では個人のパソコンのデータやスマートフォンのデータが調査対象になることもあるので、税務調査は、納税者にとって、強烈なストレスになるようです。
皆さんも、突然パソコンのデータやスマートフォンのデータを見せてくださいと言われれば、不快に感じる人も多いでしょう。私が、調査に立会うとクライアントから、調査に協力するので、早く調査を終わらせてほしいとお願いされます。
仮想通貨の税務調査に関して
調査が入っても、とぼけていればいいと思う方も中にはいるかと思いますが、調査官も暇ではないので、基本的には、必ず申告の修正が必要である原因があるから調査に来るのです。
国税庁は、平成30年11月31日に公表した「仮想通貨関係FAQ」に「各仮想通貨交換業者の実態等を確認した」と記載があるように、仮想通貨交換業者を通じて、仮想通貨投資家の仮想通貨の所得の捕捉をしていると考えられます。
また仮想通貨の税務調査の場合は、通常の調査官に加え、パソコンや通信技術に精通している特別な調査官である情報技術専門官を同行して最低2人で調査に来ます。調査の対象は電子機器がターゲットになります。仮想通貨取引においては電子機器さえ押さえてしまえば証拠収集が容易なので、そこが他の税務調査と違う点です。
当然、私たち税理士も仮想通貨に詳しくないといけません。マイニング、ハードフォークそしてアフィリエイトなどの話が出てきた時に、詳しくなければ納税者に代わり調査官に状況を説明できません。
また、同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合の取得価額を移動平均法にするか、総平均法にするかも選択次第では税額に大きな差が生じます。仮想通貨を取引する方の多くは、数種類の仮想通貨を取引します。
仮想通貨は、平成30年3月31日時点で、日本国内だけでも1596種類が流通し、その時価総額は27兆4,339億円(出典:一般社団法人日本仮想通貨交換業協会「仮想通貨取引についての現状報告」)」あることから、私は、クライアントの税務調査に立会う際に、クライアントの取引している仮想通貨の性質や仕組みを勉強してから立会うようにしています。
仮想通貨ごとの性質や仕組みが分からない税理士では、税務調査に立会う意味がないと考えるからです。
仮想通貨の税務調査に関しての国税庁の動向を教えてください
2018年7月に新たに就任した藤井健志国税庁長官の雑誌「税と経営」平成30年9月11日№2005号(株式会社税経)に掲載された就任インタビューでは、「仮想通貨取引への対応」と題しての記事が、消費税率の引き上げの話に次いで二番目に出てきています。
これには非常に大きな意味を持っていると考えます。その記事の中で長官は「あらゆる機会を通じて課税上有利な各種資料情報の収集に努め、必要があれば税務調査を実施する」と発言しています。
所得のある人は必ず捕捉をする。国税庁長官が言っているというのは、トップダウンでやれということなので、国税庁は本気で仮想通貨の税務調査に乗り出していると言えるでしょう。
実際に国税庁は、税務大学校で仮想通貨の所得に関して徹底的に研究して、税大論叢という研究論文(平成29年6月国税庁税大論叢第88号)を作成し、その研究内容も公開しています。
また、仮想通貨交換業者の実態等も確認済です。そうすると、仮想通貨交換業者から個人の仮想通貨売買情報をどこで、どう収集するかもすでに研究済と考えていいでしょう。
また、前述の仮想通貨関係FAQは仮想通貨の確定申告の簡易化についても公表があり、その上で申告をしない場合には税務調査につながることになります。こうしたことから、今後、税務調査は確実に増えていくと思います。
最後に税務調査のために申告者ができることを教えてください
まず、税務調査の対象者にならないことが一番大事です。
先ほども言いましたが、仮想通貨交換業者からの資料の提供によって国税庁が仮想通貨の所得の申告が必要な人を把握している可能性があるので、正確に計算をして、適正に確定申告をするようにしましょう。
仮想通貨の所得計算は、思った以上に手間のかかる作業です。
私自身も利用していますが、株式会社Aerial PartnersのGtaxをはじめとした仮想通貨の所得計算ソフトを効果的に利用して、仮想通貨の所得計算を行うことが賢明であると考えます。
今でも間違った知識を持った、あるいは仮想通貨自体に理解がない税理士が多いのが現状ですので、心配な場合は、仮想通貨に精通して、ちゃんと仮想通貨の計算ソフトを利用している税理士に依頼することをお勧めします。
たまらん坂税理士事務所 所長 税理士 坂本 新
国税局及び税務署の各部署等に25年勤務。
税務当局の任意調査及び査察調査から税務訴訟に至るまで国税の「攻め方」を熟知する税理士。50歳を契機に国税局を離職し、平成29年東京都国立市に「たまらん坂税理士事務所」を立ち上げ、税務調査及び仮想通貨関連税務に特化した税理士事務所運営を行っている。
税理士業の傍ら、ボランティア活動として行なっている忍野八海水底コイン(硬貨)回収潜水ボランティアの代表として多くのメディアに出演している。
引用元: CoinPost
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