XRP台帳はPoW台帳より「耐検閲性」が優れている|耐検閲性とは
- 「検閲」、「耐検閲性」とは
- 「検閲」とは、個人のネットワーク参加やブロックチェーン上のトランザクションを(技術的な原因ではなく)何らかの意思によって差別的に制限することを指します。「耐検閲性」とはブロックチェーン上で「検閲」が困難であることを指します。
- 「ハードな検閲」、「ソフトな検閲」とは
- Schwartz氏はさらに細かく「ハードな検閲」と「ソフトな検閲」についても定義しています。「ハードな検閲」とは、特定のアカウントに長期的に意図的な大きな障害を与えること、「ソフトな検閲」とは、特定のアカウントに短期的に意図的な小さな障害を与えることです。
- XRPとBTCの「耐検閲性」
- XRP台帳システム、BTCのPoWシステムともに「ハードな検閲」と「ソフトな検閲」に対する耐性をほとんど満たしていますが、XRP台帳は「ソフトな検閲」を検証することができるという点で、BTCのPoWシステムよりも優れているとSchwartz氏は主張します。
リップルネットワーク開発者のDavid Schwartz氏(以下、Schwartz氏)は6月19日、自身のブログ上でXRPの「耐検閲性」について考えを述べました。
Schwartz氏は、まず「検閲」や「耐検閲性」を厳密に定義し、その性質を説明しました。
さらに、「ハードな検閲」と「ソフトな検閲」の違いを解説し、ビットコインなどのPoWシステムは「ソフトな検閲」に耐性がない一方で、XRP台帳システムは「ハードな検閲」と「ソフトな検閲」の両方に耐性があると主張しました。
検閲(censorship)とは
リップル社の暗号研究部門を統率するSchwartz氏は6月19日、自身のブログ上で、ビットコインなどと比較しながら、XRP台帳の「耐検閲性」についての考察を公表しました。
一般に、「検閲」という言葉は、公的権力が思想や表現に対して内容を検査し規制を加えるという意味で用いられます。
しかし、Schwartz氏が定義する「検閲」とは、個人のネットワーク参加やブロックチェーン上のトランザクションを(技術的な原因ではなく)何らかの意思によって差別的に制限することを指します。
そして、「耐検閲性」とは、ブロックチェーン上で「検閲」が困難であること、すなわち、ブロックチェーン上の取引内容の改ざんやネットワークへの参加制限を故意的にすることが困難であるということを意味します。
したがって、ビットコインは、ブロックチェーン上のトランザクションを改ざんすることがほぼ不可能であり、誰でもネットワークに参加することができるため、「耐検閲性」を満たしていると言えます。
ここで、ハッキングなどによるシステム全体に及ぶ障害や、経済的にトランザクションが成り立たないなどといったような状況は「検閲」に当たらない事に注意してください。
「ハードな検閲」と「ソフトな検閲」
Schwartz氏はこの「検閲」を程度の差によって「ハードな検閲」と「ソフトな検閲」の2種類に分類しています。
「ソフトな検閲」とは、一部のネットワーク参加者が取引の過程で利益又は不利益を被る事を指し、「ハードな検閲」とは、特定の個人が長期にわたり障害を受けることを指します。
ハードな検閲 | ソフトな検閲 | |
---|---|---|
意味 | 特定のアカウントが長期にわたる大規模な障害を差別的に与える事 | 特定のアカウントが短期にわたる取引上の障害を差別的に与える事 |
例 | 特定のトランザクションを改ざんする、または特定の個人をネットワークから排除する | マイニング事業者が特定のアカウントのトランザクション承認を数秒遅らせる |
耐検閲性が満たされない事による問題点 | ネットワークの中立性が保たれなくなる(致命的な問題) | 分散型取引所ではフロントランニングが多発する危険性がある(重大だが致命的では無い問題) |
検閲に対する立証 | 容易 | 困難 |
ハードな検閲
「ハードな検閲」は、資産移動のために使われるパブリックブロックチェーンにとっては、命取りになり兼ねません。
一部の参加者が、技術的な理由もないのに、簡単に除外されるような事態になれば、中立性と分散性が保たれなくなるからです。
一方、「ハードな検閲」が起こった場合、ブロックチェーンの特性上、そのケースを実証するのは容易です。
なぜなら、システムのルールやネットワークの状態は全て公開されているため、トランザクションの有効性はシステムのルールに照らし合わせて、検証することができるからです。
多くのブロックチェーンシステムの場合、「ハードな検閲」に耐性がある可能性が高いとSchwartz氏は述べています。
しかし、この事実だけでは、そのブロックチェーンシステムが、優れた「耐検閲性」を持つ証にはなりません。
ソフトな検閲
「ソフトな検閲」は、それほど重大な事態には至らないものの、立証するのが困難になります。
「ソフトな検閲」の一例は、大規模なビットコインのマイニング事業者が、特定のアカウントのトランザクションの承認を数秒遅らせることなどが挙げられます。
「ハードな検閲」に比べ、「ソフトな検閲」はほとんどの場合大きな影響力は持たず、通貨の「価値保存機能」は保たれます。
しかし、通貨の「取引機能」に関しては、多少問題が出てきます。
特に、分散型取引所の場合、フロントラニングなどの不正取引手法を使い、取引を操作することもできるからです。
フロントランニングとは、個人が取引に関する何らかの発注を出した時、それを見た攻撃者が先回りして自身の発注を通す事によって、本来先に発注が受け付けられるべき個人を出し抜いて利益を得る手法です。
「ソフトな検閲」に対する「耐検閲性」が満たされないと、分散取引所で個人がある発注をした時、マイナーがその個人を出し抜くような発注を出し、自身のトランザクションを優先して承認する事で、マイナーがリスクを取らずに利益を上げられる可能性があります。
XRPとBTCの「耐検閲性」
Schwartz氏は、XRP台帳システムがこの「ハードな検閲」と「ソフトな検閲」の両方に高い耐性を持つ一方で、BTCのPoWシステムは「ソフトな検閲」に対する検証ができないと指摘しています。
XRP台帳システム | BTCのPoWシステム | |
---|---|---|
ハードな検閲 | 耐性あり | 耐性あり |
ハードな検閲に対する検証 | 検証可 | 検証可 |
ソフトな検閲 | 耐性あり | 理論上は耐性ないが、実質問題なし |
ソフトな検閲に対する検証 | 検証可 | 検証困難 |
ビットコインの耐検閲性
ビットコインは、「ハードな検閲」に対する抵抗力は高いと言えるでしょう。
なぜなら、大多数のマイナーが長期にわたり共謀しない限り「ハードな検閲」は実現不可能だからです。
一方、「ソフトな検閲」に対して、ビットコインは理論的にはほとんど耐性がないと言えます。
ただし、ある特定のトランザクションを遅らせることで、マイナーが得られる利益はなく、さらに個別のマイナーがトランザクション元にの大きな影響を与えることはできないため、実際には大きな問題にはならないと考えられます。
PoW によるブロックチェーンは、フロントラニングなどの不正行為によって取引から報酬を上げようとするマイナーも出てくる恐れがあるため、「ソフトな検閲」への抵抗力があることが一層大きな課題となります。
XRPの耐検閲性
XRP台帳の場合は、「ハードな検閲」への耐性には大変優れたシステムだと言えます。
なぜなら、不特定多数のマイナーではなく、認証されたValidator (承認者)がトランザクションの承認を行うため、「検閲」を行うためにはほとんどの承認者が共謀し、短時間で行わなくてはならないからです。
その上、検閲の事実は容易に立証され、ネットワークのステークホルダーによって共謀した承認者を解任することが可能だからです。
また、「ソフトな検閲」のほとんどに対しても、耐性を持っています。
さらに最も重要な点は、XRP台帳では「ソフトな検閲」を検出することが可能だということです。
ここでも、Validator (承認者)が認証されていることが鍵になります。
これは、XRP台帳上にある分散型取引所の場合でも、「ソフトな検閲」に影響を受けやすいケースを見付け出し、対処することができるということを意味します。
引用元: CoinPost
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