『仮想通貨の問題と可能性』|60ヶ国の中央銀行が加盟する国際決済銀行が報告書を提出
- ブロックチェーンと既存金融システムの関係性
- BIS(国際決済銀行)は、仮想通貨を構成するブロックチェーン技術は現時点では、金融システムの代替となるには不十分で、信用低下を招きかねないと懸念を表明。BISの関係者は、これまでも仮想通貨の発行に関して、懐疑的な姿勢を一貫している。
- BIS(国際決済銀行)とは
- 1930年に設立された中央銀行相互の決済をする組織。通貨価値と金融システムの安定を目的として中央銀行の政策と国際協力を支援。2017年(平成29年)6月末時点で、日本を含め60か国・地域の中央銀行が加盟しており、日本銀行は、1994年(平成6年)9月以降、理事会のメンバーとなっている。
ブロックチェーンは金融システムの代替になり得るか
BIS(国際決済銀行)は、Annual Economic Reprot 2018にて、送金や決済などの金融システムには、経済活動における需要の変化に対応できるようなある程度の柔軟性が必要であり、中央銀行は上記に挙げたような需要の変化に対応できるように、法定通貨の供給を準備しているなど効率よく決済システムを運営していると評価。
一方で、仮想通貨を構成するブロックチェーン技術は既存の金融システムに取って代わるには、まだ不十分であると指摘しております。
6/17(日)に発表されたBISの年度経済報告では、仮想通貨が決済効率を改善できる適所はあるものの、「無許可」状態にあるため、金融システムの基礎となり得ないと報告しました。
また、BISも他の中央銀行が模索しているように、独自の仮想通貨を発行する可能性にも言及しました。
分散型ネットワークのリスク
また、BISは同レポートで、「ブロックチェーンなどの分散型コンセンサス(仮想通貨トランザクションの認証の仕組み)が、既存の金融システムへの信用の低下を招きかねない」とも指摘しております。
もし、金融システムへの信用が低下した場合、決済のファイナリティへの信頼性も揺らぎ、金融システム自体が機能不全に陥り、通貨の価値も失われてしまうといったリスクシナリオについての言及をしております。
金融システムの信用の他にも、莫大なエネルギーの消費量に依存しているだけでなく、トランザクションが増えれば増えるほど、ネットワークの遅延や価格変動の影響を受ける事も同レポートでは問題視されております。
取引手段として使われる通貨を取引需要に応えたり、合わせていく為には供給量を増やしたり、減らしたりする必要があり、それをオペレーティングするような中央機関が必要であり、また中央機関は市場に起こった損失を吸収する為に、市場の取引の機能を持ち合わせていなければならないと説明。
その後、「分散型台帳技術すなわちブロックチェーン上では、仮想通貨の価格を安定させるような中央機関は存在しない為に、過剰なICOトークンの販売や流通、そして不安定な仮想通貨の価格形成が起こっている」と、同レポートで注意を促しました。
分散型台帳が金融システムに代わったとしたら
BISはさらに、「誕生した仮想通貨とその分散型台帳が、中央銀行や商業銀行などの決済システムに代わってすべての決済処理をする事になれば、個人のスマートフォンや、企業のサーバーもこの膨大な処理量に圧倒され、インターネットが止まりかねない」との指摘をしております。
ファイナリティに関する問題
現在クレジットカードや銀行の送金などで使われている主流の決済システムでは、その支払いが一度中央銀行の台帳に記録されれば、そこでファイナリティが発生し、取り消し不可能となります。
BISはこのファイナリティの点について、以下のように論じました。
またハードフォークに関しても、分散型台帳技術への信用を弱める要因だと指摘。
BISが挙げた上記のような問題点は、プロトコルの更新で解決する事が可能ですが、そもそも分散型台帳技術がスケーラビリティの問題を抱えている事や、その他脆弱性を抱えている事が原因であり、分散型台帳技術の本質的な仕組みの部分での欠点が露呈した格好となっております。
アプリケーションとしての利便性
以上のような理由から、BISは仮想通貨、分散型台帳技術に対して「通貨」としては不適格であると評価しておりますが、クロスボーダーの決済システムとしての応用について、ブロックチェーンの方が大量の台帳を維持するコストよりも利点が勝っており、アプリケーションとしての利用可能性を同レポートで示唆しております。
将来の実用可能性としては、自動執行する仕組みと決済データを許可する仕組みを組み合わせた分散型台帳技術を用いた決済方法が想定され、この場合、貿易金融のような複雑な決済における事務プロセスをより簡素化できる事が、同レポートの中で期待されております、
規制の壁
今回のレポートでは、マネロン対策規制など仮想通貨が直面する規制の壁についても言及されておりました。
モネロやZキャッシュのような匿名通貨は、脱税や違法取引に利用されているかどうか見極める事は非常に困難であり、消費者保護の観点から見ても詐欺まがいのICOは深刻な問題であると改めて指摘されております。
仮想通貨に関する規制は、既存の規制の枠組みに該当しない為、規制当局の対応も各国様々であり、どのように基準を設けるか、規制をどう強化するか各国悩ませている模様です。
特にICOに関する規制は、全く独自の法的枠組みで考えなければならない枠組みでありますが、法律的準拠を定める事が不可能であり、間接的に規制を施すなどで対処しなければならないようです。
また、同レポートでは、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)について、「全く別の問題として考える必要があり、CDBCに現金の機能を持たせるほか、中央銀行の干渉なく銀行や消費者、企業などが使用する構想について」言及されておりました。
引用元: CoinPost
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